【交通安全ニュース解説コラム】第63回 新年度は自転車への注意を新たに
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。3月5日、政府は16歳以上の自転車運転者の交通違反に対して、反則金を科すことなどを盛り込んだ道路交通法改正案を閣議決定しました。いわゆる「青切符」による取り締まりです。改正法が成立すれば、公布から2年以内に施行されることになります。対象となるのは、信号無視や一時不停止、右側通行などの通行区分違反、携帯電話を使用しながらや、傘を差したりイヤホンをつけたりしながらの運転など、112の違反行為です。 交通事故件数は減少、しかし自転車事故は増加 警察庁の発表によると、自動車乗車中の事故は減少しているものの、自転車乗用中の事故は増加しているとのことです。令和4年の自転車関連交通事故は全国で69,985件発生しており、そのうち、自転車側に何らかの違反があった事故は46,886件となっています。相手当事者としては自動車が多く、最も多いのは、出会い頭の事故です。自転車側の違反事項として、安全不確認や動静不注視、交差点安全進行、一時不停止などの違反が目立ちます。 このコラムを読んでいる方は自動車運転者側になるかと思いますが、自転車との事故を防ぐためにも、自らができる事故防止策は取るようにしてください。例えば、運転中の車間距離ですが、対車両だけでなく、自転車に対しても十分な車間距離を取るようにしてください。自転車を運転している人の多くに見られる行為ですが、後方確認をせずに進路を変えることがあります。そのような自転車に追突しないようにするためにも、突然の進路変更を想定して車間距離を広めに取るようにしましょう。また、追い越しをする時には、自転車との間に1.5メートルは空けてください。ぎりぎりでの追い抜きは接触などの事故を招きます。 中高生の自転車事故 これからの時期、自転車に乗る中高生の事故が増加します。高校生の交通事故の85%は、自転車乗用中に起こっています。特に16歳の死傷者数が最も多く、少し前のデータになりますが、平成25年から平成29年までの5年間において、自転車乗用中の16歳の平均死傷者数は5,218人にものぼります。(出典:内閣府「自転車交通安全講座」) 時期としては、新学期が始まる4月ももちろん多いのですが、通学に慣れて注意力が低下してくる5月から7月にかけてさらに増加します。自転車で毎日通る場所が「慣れた場所」となり、一時停止をせずに交差点に進入してしまったり、見通しの悪い交差点にもかかわらず安全確認をせずに進入してしまったりし、出会い頭の事故を起こしてしまいます。みなさんが通行する道路が、中高生の通学路にあたる場所や駅までの主要道路となっている場合は、自転車に十分気を付けるようにしてください。右側を走行する、いわゆる逆走自転車も多くみられます。車両の交通量が多い場所だと、逆走自転車に気付くのも遅れてしまいがちです。路側帯との距離はなるべく空けるようにして走行することで、事故を予防できると思います。 みなさんのお子さんに、自転車に乗る子がいる場合は、交通ルールを改めて教えてください。お子さんの通学路上にある道路標識を確認し、違反行為と事故を起こしかねない運転について確認することで、子どもの死亡事故を減らすことができます。車との事故で自身の命が失われるだけでなく、高齢歩行者との接触で相手を死なせてしまう場合があることも伝えてください。過去には、歩行者との事故で9,000万円を超える損害賠償金の支払いを命じられたケースもあります。高額な賠償金の責任も重くのしかかりますが、何より、相手の命を奪ってしまうことがどれほど重いことなのかを伝えるようにしてください。 =====執筆:上西 一美株式会社ディ・クリエイト代表一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長Yahooニュース公式コメンテーター 1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。
【交通安全ニュース解説コラム】第62回 状況に応じた速度と車間距離を
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。3月1日、長野県小諸市の上信越自動車道で、同時間帯に約20件もの多重事故が発生しました。事故は小諸と佐久インターチェンジの間のおよそ2 kmの間で起こっており、48台もの車が関係していたという発表でした。事故によって、1人が亡くなられています。当時、現場付近では雪はやんでいたものの、濃い霧に覆われて視界が悪かったことが、事故に大きく関係していると思われます。 道路交通法施行令では、夜間以外でも灯火をつけなければならない場合が定められています。第19条第1項に「トンネルの中、濃霧がかかっている場所その他の場所で、視界が高速自動車国道及び自動車専用道路においては二百メートル、その他の道路においては五十メートル以下であるような暗い場所を通行する場合及び当該場所に停車し、または駐車している場合とする」と記載があります。今回の事故では、事故を目撃した運転者が「霧がすごくて、前方20メートルくらいしか見えなかった」と証言をしています。このような状況なので、多くの車は前照灯をつけて走行していた可能性があります。しかしながら、20件ものの事故が起こっていることを見ると、安全な速度で車間距離を保持して走行していたのかは、疑問が残ります。 天候と路面状況で速度を判断する 高速道路上で、「停車している車がいるはずがない」「制限速度は守っているから大丈夫」という考えで、天候や路面状況を考えずに運転をしてしまうと非常に危険です。実際、今回の多重事故に巻き込まれた人の中には、「霧でほとんど視界がなかった。発煙筒が目に入り右車線に進路変更をしたが、止まったところに大型トラックが突っ込んできた」と話している運転者もいたようです。なぜ止まったのかまでは報道されていなかったので、停止理由は分かりませんが、高速道路上でも停止している車がいるかもしれないという認識は持つようにしてください。事故当時のように、ほとんど視界がない状態で運転しなければならない場合は、道路上で事故が起こっているかもしれない、止まっている車が見えないかもしれないという意識を持ち、安全に走行できる速度で運転するようにしてください。たとえ高速道路であっても、前が見えないのであれば、速度を落として走行してください。 また、路面状態も、凍結あるいはアイスバーンの状態だった可能性があります。このような路面状態では、乾いた路面と比べて停止距離が長くなります。JAF(日本自動車連盟)では、路面が乾いておりタイヤが新しい場合は、時速100 kmでは100 mの車間距離、時速80 kmでは80 mの車間距離が必要としており、路面が濡れていてタイヤが減っている場合にはその2倍程度の車間距離を取るように推奨しています。 4月からは、総重量8トン以上の中大型トラックに対する速度上限が緩和され、高速道路での最高速度が現行の時速80 kmから時速90 kmに変わります。規制緩和は、物流業界での人手不足が深刻化する「2024年問題」に絡んだ政策で、実際に2024年問題の解決策になり得るのかは甚だ疑問ではありますが、効率性を追求するとリスクが上がるのは確実です。私のクライアントには、制限速度が引き上げになっても安全を優先して時速80 km制限のまま運用すると話す企業も多数います。「違反ではないから」という判断で速度を上げるのではなく、安全かどうかで走行する際の速度を決めてください。 =====執筆:上西 一美株式会社ディ・クリエイト代表一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長Yahooニュース公式コメンテーター 1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。
【交通安全ニュース解説コラム】第61回 横断歩道に対する心構え
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。2月20日、静岡県焼津市の市道交差点で、交差点を横断中の小学生4人が軽自動車にはねられ、病院へ運ばれるという事故がありました。警察の調べでは、軽自動車は子供たちが横断中の横断歩道へノーブレーキで突入したとみられ、運転者は過失運転致傷の現行犯で逮捕されました。後日、ドライブレコーダーの映像によって、運転手は直前まで児童に気づいておらず、慌ててブレーキを踏んでいたことが分かりました。直前まで児童に気づいていなかったとだけ報道されており、ながら運転なのか漫然運転なのか、気づかなかった理由に関しては伝えられていませんでした。 また、2月22日には、東京都葛飾区で、軽自動車とワゴン車が衝突し、歩行者5人が巻き込まれるという事故がありました。防犯カメラの映像などから、軽自動車が赤信号を無視して交差点に進入し、ワゴン車に衝突したことが判明しました。報道された映像では、右前方が大破した軽自動車が交差点内にあり、衝突されたワゴン車は、ちょうど横断歩道がある場所の歩道に乗り上げて停止していました。 ひし形の道路表示の先には横断歩道 焼津市の事故現場は信号のない交差点でした。信号がない横断歩道では、道路交通法第38条により、歩行者が優先されます。つまり運転者は、横断歩道に人がいる場合、必ず停止しなければならないのです。仮に対向車の死角などで見えない場合でも、同法により停止することができる速度まで減速する義務があります。また、信号のない横断歩道の手前には、多くの場合ひし形の道路標示が描かれています。これは横断歩道があることを示す表示です。ひし形の道路標示を見たら、減速準備に入り、ブレーキにあらかじめ足を置いておく「構えブレーキ」をするようにしてください。横断する歩行者をひいてしまわないよう、事故防止のための運転行動をとってください。これからの季節、特に4月以降は、小学校に入学したばかりの幼い子供たちが、子供だけで生活道路を行き来するようになります。事故が増えるのもこの時期です。十分に気を付けて運転をしてください。 葛飾区の事故のように、車同士の接触の衝撃で横断歩道や歩道に車が突入し、歩行者を巻き込んでしまうのは、アクセルを踏み込んだ状態で交差点に進入し衝突しているケースです。交差点内に進入する時には、アクセルを踏み込むのではなく、すぐにブレーキが踏めるように「構えブレーキ」で進入してください。見通しの悪い交差点であれば、法令上、徐行義務がありますので、速度を落とすことを徹底してください。 事故を起こした時に、周囲にいる歩行者や自転車、ほかの車両を巻き込まないかどうかは、運転者が選べることではありません。「ほんの少しだから」「このくらいいいだろう」そんな一瞬の気のゆるみや行動で、誰かの命を奪ってしまうことがないよう、運転中は運転をすることに集中してください。あなたが運転している車両は、簡単に人を死なせてしまう凶器だということを、忘れないでください。 =====執筆:上西 一美株式会社ディ・クリエイト代表一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長Yahooニュース公式コメンテーター 1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。