【交通安全ニュース解説コラム】第12回 冬に増える車輪脱落事故
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。毎日寒い日が続いていますね。 雪道走行をする方や事業用自動車などは、冬用タイヤに交換してから1~2か月が過ぎている頃かと思います。先月もいくつかニュースがありましたが、冬用タイヤ装着時期に増えるのが車輪脱落事故です。群馬で起きた事故では脱落したタイヤが歩行者に直撃し、歩行者の方はろっ骨を折るなどの重傷を負ってしまいました。 令和2年度、脱輪事故が最多に 昨年10月に国土交通省が発表した令和2年度の大型車車輪脱落事故の統計によると、令和2年度の事故件数は統計史上最多となる131件でした。事故の95%は左後輪の脱落です。左後輪の脱落が圧倒的に多い理由は、いくつかあると言われています。左折時には左後輪がほとんど回転しない状態で旋回するため、タイヤがよじれるように力が働き、負荷がかかるためであるとか、右折時には遠心力により積み荷の荷重が左後輪に大きく働くといったことです。また一部では、10年前にネジ規格が変更されたことも影響しているのではと言われています。規格変更により左側のネジも右ネジになり、タイヤの回転方向とネジを緩める際の回転方向が同じになった事がその背景にあります。規格変更になった10年で、車輪脱落事故は12倍に急増しているそうです。事故は特に12月と2月に増える傾向があります。冬用タイヤに交換してから1か月以内に起こっている事故が131件中76件、つまり約60%にものぼります。まさに今の時期に脱落事故が増加しますので、点検はしっかりと行うようにしてください。 傾向の強い事故は防ぐ余地がある これまでの事故では、ボルトが折れている事故が割と多いなという印象を受けました。ボルトが折れているかを点検時に発見できるのか分かりませんが、不安がある方は3週間に1回程度は点検をしてもらうのも必要だと思います。傾向が強い事故というのは、防ぐ余地があります。今回お話したような脱輪事故などは、12月から2月にかけて起こるという“時期”、左後輪という“場所”、そしてホイール・ボルトの折損やホイール・ナットの脱落によるという“原因”がほとんどのケースに当てはまるという事が分かっています。つまり、そこを重点的に点検すれば、事故は防げる可能性が高いのです。大型車のタイヤは、直径約1メートル、スタッドレスタイヤになると重さは約60kgになるものもあります。ホイールが付いたままの状態で外れるので、重さは100kgにもなります。それが猛スピードで転がって歩行者に激突したら、軽いけがでは済まない事は明らかです。冒頭の事故でも被害者の方はかなりのけがを負われています。皆さんの手で、不幸な事故が起こらないようにしっかりとケアして防いでいって欲しいと思います。 =====執筆:上西 一美株式会社ディクリエイト代表一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長Yahooニュース公式コメンテーター 1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。
【交通安全ニュース解説コラム】第11回 安全運転のための非効率な動き
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。1月4日に、警察庁が令和3年中の交通事故死者数を発表しました。死者数は2636人。前年に比べ203人減少し、5年連続で最少を更新しました。近年、車両の安全装置の向上や、医療技術の発展、そして何よりも警察による取り締まりのおかげで、交通事故死亡者数は減少傾向にあります。確かに減ってはいるのですが、それでも昨年は1日平均7.22人が亡くなっています。「1日に」です。時間にすると3時間半に1人が亡くなっているという事です。これは決して少ない数字ではありません。私たち運転者一人ひとりが安全意識を持ってハンドルを握る事が出来れば、まだまだ犠牲者は減らせると思います。 非効率な動きが安全を担保する 運転というのは、動きながら動くものを見て車を操作します。人間は本来、自身が動きながら「動くもの」を視認し、それに合わせて行動するのは苦手な行為です。仕事でもそうですが、動きながら何かをするというのは一見効率が良いように思います。私もその調子でずっと仕事をこなしてきた時期がありました。とにかく仕事を詰め込んで、同時進行でいくつもの作業をこなし、走り続けていました。しかしそうするとミスが増えるのです。車の運転もやはり同じで、効率を求めて「動きながら」確認と運転操作を行うと、安全性が担保されないのです。一番良いのは止まった状態で物を見る事ですよね。それが最もミスをなくせる状態だと思います。非効率なようでもやはり「止まって」確認することほど安全を担保できる行為はないのです。これは運転行為で当てはめると「一時停止」に当たります。一時停止線があるのは、事故率が高い場所です。止まって確認をしっかりしてくださいという、道路のメッセージです。一時停止線で止まらずに確認する車をよく見かけます。停止線で止まると左右から来る車が確認できない、という人もいます。一時停止線は、歩行者や自転車等との出会い頭の事故を防ぐためのもので、通行車両の流れを確認するための場所ではないのです。確認するポイントが違うのです。 10km/hの差が死亡率を下げる 一時停止と同じく、運転において「非効率」な行動をして欲しい場面は他にもあります。以前、このブログでも少しお話をした「速度の質」を高めるための構えブレーキです。例えば時速10km/hで徐行運転をし、安全に気を配っていたとしても、足がブレーキにあるのかアクセルにあるのかで事故の結果が変わるのです。徐行はしているけれどもアクセルに足がある状態というのも、効率的に運転をしようという意識の表れだと思います。空走距離という言葉を皆さんもご存じだと思います。危険を認知してから減速するまでの時間のことですね。この時にアクセルに足があると、ブレーキに踏みかえるだけで0.2秒の時間がかかります。この0.2秒が大きな違いを生むのです。0.2秒早くブレーキを踏むことで速度はかなり落とせると思います。たとえそれで10km/hほど速度を落とせたとしても、そんなに変わらないのではないかと思う方もいるかもしれませんが、車の速度が10km/h上がるごとに歩行者の死亡率というのは3倍も跳ね上がるのです。大切な命を守り、あなた自身の人生を守るために、非効率と感じても構えブレーキを習慣にしてください。 =====執筆:上西 一美株式会社ディクリエイト代表一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長Yahooニュース公式コメンテーター 1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。
【交通安全ニュース解説コラム】第10回 安全運転って何?
明けましておめでとうございます。ディ・クリエイトの上西です。年末年始の慌ただしい時期もようやく抜けようとしていますが、皆さんは無事故で過ごせましたでしょうか。今年最初のコラムは「安全運転って何?」というテーマでお話をしたいと思います。これまでももちろん、安全運転をするためにはどのような運転行動をしたらよいか、事故を起こさない・巻き込まれないためには何に注意して運転をしたら良いかなど、その都度ポイントを絞ってお話してきました。今回は、「皆さんが思う安全運転とは何か」についてです。 そもそも安全運転ってどういうこと? 「安全運転とは何ですか」と聞かれたら、皆さんは何と答えますか?セミナーでもよくお聞きするのですが、例えば「速度を守ります」や「道路交通法を守ります」、「細心の注意を払います」といった答えが返ってきます。人それぞれに安全運転についての考えがあって、私も勉強になることが多くあります。中でも非常に印象に残っているのは、5年ほど前に福岡県の運送会社様で研修を行った時の事です。いつものように私は受講者たちに「安全運転とは何ですか」と問いかけました。すると20代の男性社員が「分かりません」と答えたのです。私は最初、ふざけているのかと思いました。「分かりませんってどういうこと?」と重ねて問いかけたら、彼は「本当に分からないのです」と再度答えました。そして彼は続けてこう話したのです。 「僕は速度も守るし、一時停止もしっかり止まります。再確認もします。完璧な運転をしていると思います」それを聞いた時に私は「じゃあ安全運転しているじゃないですか」と言ったのですが、彼は「でも、僕がいくら完璧な運転をしたと思い込んでいたとしても、周りの車が『あのトラック危ないな』とか歩行者が『あのトラック怖いな』と思ったらそれはもう安全運転じゃないですよね」と答えたのです。 私はそれを聞いてハッとしました。「安全運転とは自分が決める事ではなく、周りが決めることだ」と彼は言ったのです。 安全運転している「つもり」 例えば、歩行者の横を車で通過する場合は、徐行するように道路交通法で定められています。ただし、歩行者との距離が1メートル以上ある場合は徐行しなくても良い事になっています。私は1メートル以上の距離があったとしても必ず徐行をしています。もちろん、安全のためにです。徐行運転をしている方としては安全運転をしているという気になります。しかし、先ほどの彼にとってみれば、すれ違う歩行者側が「この車危険だな」と思ったら、いくら徐行をしていたとしてもそれは安全運転ではないということなのです。 私たちは常に安全運転をしている「つもり」であって、周りの人や車が、自分の運転をどう評価するかがポイントになるのです。 安全だと思われるような運転を意識する 私は主にプロドライバー向けにセミナーを行う事が多く、よくプロドライバー達には「道路交通法を守った運転をするというのは当たり前の事、最低限やる事だ」と伝えています。自分が運転をする事によって周りの人に安心感を与える、あるいは、周りの人から見ても「この車は安全だな」と思われる運転をするのがプロドライバーの運転です。 安全運転とは、運転する私たち自身が決める事ではなくて、交通に関わる周りの人が決める事なのです。車の運転とは「感覚」ですから、自分が安全運転をしている「つもり」でも、他の車からしたら不安全な行動を取っているというのはよくある事です。皆さんも他の人が運転する車の助手席に乗った時に「この人、車間距離をずいぶん詰める人だな」とか「ブレーキを踏むタイミングが遅いな」と思う事がないですか?でもこれは運転している人にしてみたら「普通」の事であって、安全運転をしている「つもり」なんですよね。 やはり、周りの車から見て自分の運転が安全だと思ってもらえるように意識をすることが、安全運転なのだろうと思います。皆さんも、「周りの車から自分の運転がどう見えるのか」をしっかり意識して運転してください。 =====執筆:上西 一美株式会社ディクリエイト代表一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長Yahooニュース公式コメンテーター 1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。