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【交通安全ニュース解説コラム】第11回 安全運転のための非効率な動き

みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
1月4日に、警察庁が令和3年中の交通事故死者数を発表しました。
死者数は2636人。前年に比べ203人減少し、5年連続で最少を更新しました。
近年、車両の安全装置の向上や、医療技術の発展、そして何よりも警察による取り締まりのおかげで、交通事故死亡者数は減少傾向にあります。
確かに減ってはいるのですが、それでも昨年は1日平均7.22人が亡くなっています。「1日に」です。
時間にすると3時間半に1人が亡くなっているという事です。
これは決して少ない数字ではありません。
私たち運転者一人ひとりが安全意識を持ってハンドルを握る事が出来れば、まだまだ犠牲者は減らせると思います。

非効率な動きが安全を担保する

運転というのは、動きながら動くものを見て車を操作します。
人間は本来、自身が動きながら「動くもの」を視認し、それに合わせて行動するのは苦手な行為です。
仕事でもそうですが、動きながら何かをするというのは一見効率が良いように思います。
私もその調子でずっと仕事をこなしてきた時期がありました。
とにかく仕事を詰め込んで、同時進行でいくつもの作業をこなし、走り続けていました。
しかしそうするとミスが増えるのです。
車の運転もやはり同じで、効率を求めて「動きながら」確認と運転操作を行うと、安全性が担保されないのです。
一番良いのは止まった状態で物を見る事ですよね。それが最もミスをなくせる状態だと思います。
非効率なようでもやはり「止まって」確認することほど安全を担保できる行為はないのです。
これは運転行為で当てはめると「一時停止」に当たります。
一時停止線があるのは、事故率が高い場所です。
止まって確認をしっかりしてくださいという、道路のメッセージです。
一時停止線で止まらずに確認する車をよく見かけます。
停止線で止まると左右から来る車が確認できない、という人もいます。
一時停止線は、歩行者や自転車等との出会い頭の事故を防ぐためのもので、通行車両の流れを確認するための場所ではないのです。
確認するポイントが違うのです。

10km/hの差が死亡率を下げる

一時停止と同じく、運転において「非効率」な行動をして欲しい場面は他にもあります。
以前、このブログでも少しお話をした「速度の質」を高めるための構えブレーキです。
例えば時速10km/hで徐行運転をし、安全に気を配っていたとしても、足がブレーキにあるのかアクセルにあるのかで事故の結果が変わるのです。
徐行はしているけれどもアクセルに足がある状態というのも、効率的に運転をしようという意識の表れだと思います。
空走距離という言葉を皆さんもご存じだと思います。
危険を認知してから減速するまでの時間のことですね。
この時にアクセルに足があると、ブレーキに踏みかえるだけで0.2秒の時間がかかります。
この0.2秒が大きな違いを生むのです。
0.2秒早くブレーキを踏むことで速度はかなり落とせると思います。
たとえそれで10km/hほど速度を落とせたとしても、そんなに変わらないのではないかと思う方もいるかもしれませんが、車の速度が10km/h上がるごとに歩行者の死亡率というのは3倍も跳ね上がるのです。
大切な命を守り、あなた自身の人生を守るために、非効率と感じても構えブレーキを習慣にしてください。

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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。