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第2回:運転の行動パターン

前回、運転は「認知・判断・行動」の繰り返しだというお話をしました。認知は目から入ってくる情報、判断はどう行動するかを決めること、行動は結果として行う運転動作のことですね。そして最も多くのミスが起こっているのが、認知の段階であり、それが交通事故の最大の原因となっているというお話をしました。

「認知」の段階で起こるミス、つまり「見落とし」が最大の原因ですから、見落としを減らせれば交通事故も減少します。

なぜ事故が起きるのか
見落とし=交通事故の最大の原因
見落としを減少=交事通故が減少

「判断」というのは過去の経験と知識から養えます。だから判断能力は運転免許を取ったばかりの人よりも、ベテランであればあるほど能力が上がっていきます。経験と知識が増えていきますから。

ただし、ベテランでも一時的に能力が下がる時はあります。焦っているとか眠たいとか、体調が悪いとか。そういった理由がないのであれば、普段の運転の中で極端に判断能力が下がるという事はほとんどないと思います。経験を積めば積むほど、判断ミスというのはなくなっていくはずです。

「動作」のミスに関しては、スポーツと同じで繰り返しの作業によって上達しますから、当然運転も上手になっていくと思います。アクセルの踏み込み、ハンドル操作、ブレーキのタイミングなど、運転時間が増えるにつれ能力は向上します。

問題は「認知」におけるミスですね。見落としをいかにして減らしていくか。これは正直なところ、なくすのはなかなか難しいと思っています。冒頭でなぜ事故が起きるのかを囲み表示しました。この中で「交通事故」が「交事通故」になっている部分がありますが、ほとんどの方は見た瞬間には気づいていないと思います。

なぜかというと、「ここには交通事故と書いてある」という思い込みで見ているので、「交通事故」にしか見えなくなるんですね。思い込みから見落としや見間違いをしてしまうケースは非常に多い。こういったヒューマンエラーというのは簡単に起きます。だからこそ、見落としをなくす努力をするのが一番の交通事故防止になると言えるのです。

私のセミナーでよく見ていただくドライブレコーダーの動画で「山に見とれて追突事故」というものがあります。プロドライバーの運転するトラックに取り付けられたドライブレコーダーの映像なんですが、事故原因はまさに「見落とし」です。前の車が見えてから16秒も経って追突するのですが、ドライバーはその先行車を見落としてしまうのです。その間ドライバーはどうしていたかというと、左の山の景色を見ていたそうです。プロでもこういうミスをすることがあります。ヒューマンエラーというのはプロでも素人でも起こりえます。この例はとても極端ではありますが、自分の気になったこと、ここでいうと左側の山の景色ですが、それを10秒以上も見てしまう。「ありえない」と思うのですが、これがヒューマンエラーなんです。

ちなみに、その映像ではトラックは時速40キロで追突しています。そんなに速度は出ていないと感じられるかもしれませんが、相手車の後部は完全につぶれています。

見落としが事故の最大原因と言いましたが、もう一つ重要なことがあります。「怖くなくなった瞬間にミスを起こす」ということです。

例えば、日常の運転において時速56キロで走行している車両に対して、みなさんはどんな印象を持つでしょうか。制限速度が50キロ道路でも、56キロというのは多くのドライバーが日常的に出している速度だと思います。セミナーで参加者の皆さんに聞くと、ほとんどの方が「遅い」か「普通」と答えます。でも、さらに前方に大型車が停まっている状態で追突したら前の車両の後部はつぶれてしまうほどの衝撃です。制限速度から考えると“速すぎる”という速度ではないかもしれませんが、車や物を破壊してしまうか、場合によっては人を死に至らしめるかもしれない速度なのです。それを忘れてしまった人が、事故を起こしてしまいます。

見落としをなくしていくと同時に常に「怖さ」を感じておくことも、事故防止に大きな役割を果たします。

次回は「なぜ交通事故がなくならないのか」についてお話したいと思います。

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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。