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【交通安全ニュース解説コラム】第54回 飲酒運転をしないために

みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
今月の頭に京都府で、飲酒運転の車に小学生たちがはねられて怪我をする事故がありました。
運転していたのは19歳の短大生で、事故後に救護をせずに逃げ、自動車運転処罰法違反(過失運転致傷)と道路交通法違反(ひき逃げ)で逮捕されました。
運転者は「飲酒運転だったので逃げた」と供述しています。
そもそも19歳で飲酒してはいけないわけですが、ここでは「飲酒運転」という行為についてお話ししたいと思います。

今回の事故は午前8時に発生しています。
運転者が逃走したことからも、本人に飲酒運転の自覚があり、そのことから朝まで飲酒していた可能性も伺えます。
飲酒運転による事故に対する刑罰が厳しくなったにも関わらず、未だ悲惨な飲酒運転事故が起き続けていることにも驚きを隠せません。

飲酒後に運転する人の中には、「少し寝たから大丈夫」など、自分勝手で何の根拠もない基準を設けてハンドルを握る人がいます。
少し仮眠した程度では体内からアルコールは抜けません。
寝たことで少し気分が良くなることはあるかもしれませんが、それは単に眠気が収まったためにスッキリしたと感じるだけであって、アルコールが完全に抜けたわけではありません。
むしろ寝ている間は、アルコールの分解速度が半分に落ちるという研究結果もあるのです。

アルコール分解速度には基準がある

車を運転する従業員を管理する立場の人は、「飲酒運転をしないこと」と伝えるのは当然のことですが、気を付けてもらいたいのが「残酒」です。
アルコールの分解速度は、ビール500mlであれば男性で約4時間、女性は男性より体格が小さいので約5時間かかります。
この時間で分解できる酒量が「1単位」とされていて、純アルコールに換算すると約20gになります。
日本酒であれば180ml(1合)、ウィスキーは60ml(ダブル1杯)、ワインは200ml(グラス2杯)、酎ハイ(度数7%)は350ml、焼酎(度数25度)は100mlが「1単位」です。

出典:千葉県「飲酒運転根絶の啓発チラシ」
出典:岩手県交通安全協会「交通安全知識」

500mlの缶ビールを2本飲むと、アルコールの分解に8~10時間かかります。
つまりこれ以下の時間内に運転をすると飲酒運転となります。
さらにこの間に、例えば睡眠を6時間取ったとすると、アルコール分解速度は半減しますので、アルコールの分解に11~13時間を要するということになります。
酒量によっては、しっかりと睡眠を取って一晩経過したからというだけでは、体内からアルコールがなくならないのです。
この分解時間はあくまで目安です。
体格や年齢、そもそもの分解能力やその日の体調によってさらに時間がかかることもあります。
これからの時期、会社の飲み会なども増えていくと思いますが、部下が翌日に運転するのが分かっていながらお酒を飲ませてしまうと、本人はもちろん、上司の管理責任も追及されるでしょう。
これは業務時間内だけの話ではなく、車通勤をしている社員に対しても同じです。
会社が通勤手段として車での出勤を認めているのであれば、出勤時の運転が飲酒運転にならないようにする責任が会社にあると思います。

残酒に関しては、本人が無自覚である場合もあります。
今回の事故をきっかけに、改めて社員の方たちにアルコールの分解時間について伝えていただき、飲酒運転の恐ろしさを再認識してもらいたいと思います。

最後に、みなさんに見ていただきたい動画を紹介します。
ぜひ周囲の方にも広めてください。
飲酒運転撲滅のために、あなたの力を貸してください。
https://www.youtube.com/watch?v=lYgGVtb6KWI

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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。