【交通安全ニュース解説コラム】第18回 大事故になりやすい「居眠り運転」
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
5月も終わりに近づき、次第に暑さも増してきました。
これから梅雨に入ることで気候も変化し、体調にも影響が出てきます。
季節の変わり目や疲れが出やすいこの時期には、運転中の居眠りに十分に気を付けていただきたいと思います。
回避行動が取れない居眠り
居眠り運転での事故は、大きな事故になりやすい傾向にあります。
起きている状態であれば、運転者は事故の直前にぶつかる相手や物を「認知」します。
認知するので回避行動としてブレーキを踏むという行動を取ります。
しかしながら、居眠りをしている状態では回避行動がまったく取れません。当たってから気が付くのです。認知も回避行動もできないため、速度が上がった状態で衝突します。
そのため、大きな事故になりやすいのです。
道路交通法第66条には「正常な運転ができない恐れがある状態で運転してはならない」と書かれています。
これは居眠りも含みます。罪に問われやすいということです。
眠気を感じた時に、大声を出す、つねる、叩くといった五感に刺激を与える事で眠気を覚ますという方もいます。
しかしこの手法では、長時間にわたる眠気の解消にはなりません。
大声を出すと脳の前頭葉という部分が刺激され眠気が解消されたように感じますが、脳が活性化するのはほんの一瞬です。眠気を感じたら直ちに止まれる場所に移動して、車を停止させてください。
気分転換に車を降りて小休憩を取ったら眠気が収まったと、そのまま車に戻って運転を続ける方もいます。
しかしこれも、五感が刺激されたことで瞬間的に眠気が収まっているだけと考えてください。
眠気をごまかしながら運転を続けるのではなく、諦めて寝る時間を作ってください。
仮眠のポイント
仮眠を取る時の最大のポイントは「時間」です。
人間は15分から30分で深い眠りに入ると言われています。
その深い眠りに入る前に起きるようにしてください。
眠れそうにない場合でも、目を閉じて安静にする時間を取ってください。
目を閉じるだけでも脳波が変わりますので、眠気の解消に繋がります。
やってはいけないのは、眠れないからといってゲームをしたり動画を見たりして過ごすことです。
目に刺激を与えるような「作業」をしては、どれだけ休憩時間を取っても居眠り運転防止にはつながりません。
眠気を感じたら、必ず安全な場所に車をとめて仮眠を取ってください。
30分以上の仮眠を取ってしまうと、今度は夜の睡眠に悪影響が出ますので、必ず深い睡眠に入る前に起きるようにしてください。
可能であれば、アイマスクなどをして日光や外灯、お店の灯りが目に入らないようにしてください。
眠気を取るだけであれば、運転席に座った状態で休むだけでも大丈夫ですが、疲れを感じている場合は背もたれを倒してなるべく横になるようにしてください。疲労感は脳を地面と平行にして休むことで軽減されます。
ちょっとした眠気だと侮らずに、しっかりと仮眠を取って居眠りによる事故を起こさないようにしてください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。