【交通安全ニュース解説コラム】第57回 年末年始もご安全に
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
早いもので12月ですね。
今回は年末にかけて運転をするうえで気をつけていただきたいことをお伝えしたいと思います。
以下は数日前にX(旧Twitter)に投稿したものです。
直進していたトラックが、車線が減少するぎりぎりの所で乗用車に追い越しをかけられ、さらにその乗用車がUターンをしようとしたために、トラックのブレーキが間に合わずに追突してしまった事故です。
おそらく乗用車が道を間違えてしまったのだと思います。
焦ってしまって、戻らなければという思いから、突然Uターンをしてしまったのかもしれません。
人は焦ると自分でも思いもしなかった行動を取ってしまうことがあります。
ドライブレコーダー映像の事故分析でドライバー本人から話を聞ける時などでも、時折「なんでこんなことをしたのだろう」と自分の行動を不思議に思う人がいます。
これからの年末年始には、このような「不測の動きをする車」に遭遇する率が高くなります。
理由として考えられるのは、年の瀬になって繁忙期となる企業が増え、運転者に時間的な余裕がなく焦って無理な運転をしてしまうこと、そして、普段は車を運転しない人がレンタカーを借りて運転したり不慣れな遠出をするケースが増えることです。
余裕のない人や運転に不慣れな人が取りがちな「予想を超えた動き」をする可能性のある車に対してできる最大の事故防止は、「近寄らないこと」です。
挙動不審な車を見かけたら、車間距離を広めに取るようにしてください。
「近寄らない」事故防止策
前述の動画のような状況では、乗用車が右側から追い越してきた時点で、ブレーキを踏んでください。
動画を見ていただいたら分かりますが、かなり余裕のない追い越しの仕方でトラックの前方に入っていますし、その後左側まで車線を横切って白線すら越えてしまう状態となっています。
この状況でUターンをすることまでは想像できなかったとしても、「何かあるのではないか」と思うには十分なほどの、不測の動きをしている車と言えます。
相手の車が無謀な運転をしていたとしても、追突してしまっては自分にも過失がつくかもしれません。
自分の想定を超えるような運転をしている車には、基本的には近寄らないようにしましょう。
交通事故を防ぐためには、相手の動きを予測する必要があるのですが、相手の予測をする時でも基準は「自分」です。
自分ならこのタイミングでこんな運転をしないから、あの車も「しないだろう」という予測をしてしまいます。
しかし、自分の予想を超えた動きをするような車が相手では、その予測は通用しません。
だからこそ「近寄らない」ことが事故防止の最大の手段になるのです。
事故をもらわないために
もう一つ動画を紹介したいと思います。こちらも以前Xで紹介したものです。
この動画には、相手の動きを予測する時に気をつけていただきたいポイントがあります。
事故の内容としては、直進していた車が右折車と衝突しているのですが、このような事故を起こしたドライバーの多くは「相手が死角に入っていて見えなかった」と言います。
気をつけていただきたいのはここです。
自分から見えないということは、相手からも自分が見えていないということです。
お互いに見えていないわけですから、右折をしようとしているドライバーが「誰もいない」と思って交差点に進入してくることは十分に考えられる可能性です。
見えていないから「右折車はいない」と判断するのではなく、見えていないからこそ「右折車が曲がって来るかもしれない」と想定して、構えブレーキで交差点に進入するようにしてください。
自分の視線だけで危険予測をするのではなく、相手の視線や立ち位置など、相手の立場に立って考えてみるのも事故防止には大切なことなのです。
どのような原因で相手がミスをしたのかを考えると、対処法が見えてくると思います。
相手のミスとその原因が考えられるようになってくると、「もらい事故」に巻き込まれない、「もらわない防衛運転」ができるようになってくるのです。
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。