【交通安全ニュース解説コラム】第50回 命を救うひと手間
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
8月中旬、北海道でミニバンにトラックが追突する事故がありました。
事故原因の詳細はまだ分かっていません。
事故映像を見ると、ミニバンが転回か右折をしようと停止したところに、トラックが追突したようでした。
トラックの車間距離不足なのか、ミニバンが指示器を出さずに急ブレーキをかけたのか、どのような状況で起こったのかは想像の域を出ませんが、かなりのスピードで追突したようです。
衝突されたミニバンは180度回転し、バックドアはひしゃげ、ガラスは粉々に砕けて残っていませんでした。
また、一部の報道では、ミニバンの後部座席に座っていた人が、車外へ放出されたとも言われていました。
このような車外放出の事故は、そのほとんどがシートベルト非着用によるものです。
シートベルト非着用の危険性
一般道では、後部座席でのシートベルト非着用で検挙されることはありませんが、着用義務は課せられています。
令和4年の10月から12月にかけて、警察庁が全国でシートベルトの着用率に関して調査を行いましたが、それによると、全国の一般道での後部座席でのシートベルト着用率は、わずか42.9%でした。
高速道路における運転者の着用率でさえ100%ではありませんでした。
(出典: 警察庁Webサイト https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/seatbelt.html)
着用時と比較した非着用の場合の死亡率は、高速道路で約15.4倍、一般道でも約3.6倍も高くなります。
シートベルト非着用の状態で交通事故に遭った場合、どの座席位置であっても、車内で全身を強打したり車外に放出されたりする危険があります。
また、後部座席の人が非着用だった場合は、衝撃で前方へと投げ出されて前席の人の座席に衝突し、前席の人がシートとエアバッグに挟まれて、頭部を損傷することもあるのです。
シートベルトをしていなければ、自分だけでなく他の人にも危害を加えてしまう可能性があるということです。
警察庁が令和4年までの過去10年に取った統計によると、後部座席でのシートベルト非着用による死者数は825人となっており、そのうち66.7%が、座席や柱、ドアや窓ガラス、そして天井などへの車内衝突によるものでした。
このほか、24.7%にあたる204人は、車外放出で亡くなっています。
車外へ放出されると、路面や中央分離帯へ衝突し、その衝撃で亡くなるだけでなく、後続車や対向車にひかれて亡くなることもあるのです。
命を守るために
みなさんが運転する時、同乗する人にシートベルトを着用するよう声をかけていますか。
タクシーや誰かの車に同乗する時、後部座席だったとしてもシートベルトをきちんと着用していますか。
シートベルトをするだけで、事故時の死亡率を大幅に下げることができます。
ただの努力義務だから、検挙されないから、という理由でシートベルトを着用しないのではなく、「命を守るため」に、どの座席であってもシートベルトを着用するようにしてください。
以下の動画もぜひご覧ください。
上西一美のドラレコ交通事故防止「あなたは後部シートベルト していますか?」
https://www.youtube.com/watch?v=r8XlgOF-Kdc&t=317s
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。