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【交通安全ニュース解説コラム】第45回 雨中雨後の運転リスク

みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。雨の季節になりました。近年は短時間に激しく降るゲリラ豪雨などもあり、運転をしていて前が見えなくなるような危険な状況になることもありますね。運転者にとっては、かなり神経を使う時期だと思います。6月初旬、首都高羽田線の天王洲近くで、トラックが横転する事故がありました。運転者は幸い軽い怪我で済みましたが、現場の映像を見ると、トラックは横倒しになり、車両後部は首都高の壁を越えて空中に飛び出していました。また、山梨県上野原市の中央道では、トラックがガードレールに衝突する事故がありました。中央分離帯のガードレールに激突して、その勢いのままトラックは2回転して止まりました。運転者も同乗者も軽い怪我で済んだそうです。いずれの事故も、当時は雨が降っていました。事故の原因は、どちらも運転者が雨でハンドル操作を誤ってしまいスリップしたことだと思われます。

雨天時も、雨が止んだ後も、路面状況は同じ

雨天時の注意喚起でよくあるのは、「雨の降り始めは路面が滑りやすいのでスリップなどの事故に注意してください」というものです。私は年間数千件のドライブレコーダー映像を見ているのですが、雨天時の事故は、そのほとんどが雨の降り始めではなく、止みそうな時、あるいは止んだ直後に起きています。これは運転者の心理が、大きく関与しているのではないかと考えています。雨の降り始めは、ほとんどの運転者が「普段より慎重に運転しなければ」という心境になっているのではないでしょうか。一方で、そろそろ雨が止みそうだという時や止んだ時には、「もう雨は止む(止んだ)から大丈夫」と思ってはいませんか?この心理状態の違いが、事故の要因になっているのです。雨は止んだかもしれませんが、路面の状態は雨天時と何ら変わりがないのです。降り注いだ雨で道路に落ちていた埃が浮きあがり、路面は滑りやすくなっています。雨天時と同じ運転をしなければならないのに、路面の状態を忘れ、晴天時と同じ運転行動を取ってしまうため、事故を起こしてしまうのです。

雨天時の事故率は約7倍

首都高速道路株式会社では、雨天時の事故について調査をしています。それによると、2022年度の雨天時間は年間でわずか5%であったにもかかわらず(東京管区気象台発表データ)、首都高速道路で起こった雨天時の事故件数は全体の15%にもなるそうです。雨天時以外の天候で起こった事故と比較して、雨天時には約7倍の割合で接触事故が起きているとの統計もあります。さらに、雨天時の1時間あたりの死傷事故件数は、他の天候時の約4倍だそうです。雨天時には、制動距離が長くなります。晴天時と同じスピード、同じ車間距離で走行するのは非常に危険です。晴天時には止まれる距離でも、雨天時や雨が上がった直後の濡れた路面では、止まれません。晴天時よりも10km/h以上は速度を落とし、車間距離も広めに取るようにしてください。冒頭に取り上げた首都高の事故の現場には、車線の横に点線が表示されています。このコラムでも過去に取り上げたことのある「減速路面表示」です。これは事故のリスクが高い場所に表示されているものなので、必ず減速するようにしてください。「雨が上がったから大丈夫」ではなく「路面が濡れているからまだ危険」という意識で運転をしてください。

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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。