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【交通安全ニュース解説コラム】第102回
「冬季に増加する路上横臥事故―運転者に求められる早期発見と危険予測」

みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。

12月6日、茨城県守谷市のトンネル内で、倒れている男性が発見され、その後死亡が確認されました。警察の捜査により、男性をはねて死亡させ、その場から逃走したとして、男が逮捕されました。男は「物だと思った」と容疑を否認しています。

ひき逃げ事故で非常に多いのが、今回のような「物だと思った」という運転者の供述です。

現場は自動車専用トンネルという情報があり、事故に遭った歩行者がなぜそこを歩いていたかは不明です。トンネル内を人が歩いているとは、普通の運転者であればまず想定しない状況です。視界も悪く、逃げ場もないため、歩行者がいた場合、避けるのは極めて困難だと思われます。だからこそ、万が一に備えて、速度超過はしないでください。

また、想定できないからといって「ひき逃げ」が許されることは絶対にありません。

何かに接触した可能性を感じた時点で、停車して確認し救護する義務が、運転者にはあります。これまでの事故では、数キロ以上、長いものでは数十キロに渡って、被害者を引きずったまま運転したという事故もありました。事故によっては、衝突したすぐ後に確認して救護していれば、助かったと思われるケースもあります。「何かにぶつかった」「何かに乗り上げた」と感じた場合は、直ちに車を停止させ、必ず降りて確認をしてください。

「いないはず」ではなく「いるかもしれない」という意識でこれからの季節は、忘年会なども増える影響で、深夜から早朝にかけて路上で寝込んでしまう人をひいてしまうという「路上横臥事故」の発生が増加します。

何かがあることに気づいておきながら、「人ではないだろう」「ごみか何かだろう」と思い込み、死亡事故を発生させてしまうケースもよくあります。路上に何かあると気づいたら、「人かもしれない」と予測をし、手前で停止して確認をしてください。

また、前照灯は可能な限りハイビームにして、なるべく早く気づけるようにしておきましょう。ハイビームにできない状況でも、対向車が瞬間的にハイビームにして危険を知らせてくれる場合もあります。対向車がハイビームをしたら、徐行して、危険に備えてください。冬場は特に暗い色の服を着ている歩行者も多く、夜間にはさらに発見しにくい状態です。わずかな違和感を抱いたら、楽観的に「大丈夫だろう」と判断してそのまま走行するのではなく、徐行をして安全確認を行うようにしましょう。場合によっては、車を停止させて安全確認を行ってください。

ひき逃げは罪が重くなるだけでなく、救えるはずの命を奪ってしまうことにもつながります。「いないはず」と思い込まず、違和感があれば必ず確認して下さい。

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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。