 
											【交通安全ニュース解説コラム】第99回  
「たった4秒の油断で、人生が変わることがある」
					
					
					みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
昨年、安芸高田市でトラックと路線バスの正面衝突事故が発生し、バスの運転士と乗客の合わせて3人が重軽傷を負いました。
この事故の判決が先日出たのですが、第一当事者であるトラックの運転者は、執行猶予付きの有罪となりました。
事故原因は、落としたペットボトルを拾おうとした、わずか4秒のわき見運転でした。
4秒というのは、ほんの一瞬といえる時間です。
しかし、時速60kmで走行していたら、その4秒で約70mも進みます。
前を見ていなかったその70m先に、人や車がいたら、衝突してしまうでしょう。
一瞬の油断は、誰にでも起こりえます。だからこそ、車内には「落ちるような状態で物を置かない」
「取りたくなる物を手の届く範囲におかない」ことが大切です。
止められないとっさの行動で事故が起こる
私はこれまでに、3万件を超える事故映像の分析をしてきました。
中には、この事故と同じような状況で起こった事故がいくつもありました。
ダッシュボードの上に置いていた日報が落ちそうになり、思わずそれを取ろうとしてハンドル操作を誤り、
信号待ちの自転車に衝突した事故。運転中に吸っていたタバコを落としてしまい、
それを探して取ろうとして、
停止中のトラックに衝突した事故。
どれも本当に一瞬の出来事でした。しかし、その一瞬の操作ミスで、
事故を起こしてしまい、人が亡くなってしまうことがあるのです。
落ちたものを拾おうとするのは、とっさの行動です。
これは本能的な動きでもあるため、制御するのは難しいことでもあります。
だからこそ、とっさの行動が出ない環境を整えて、運転しなければならないのです。
準備で事故を防止する
ダッシュボードの上に物を置かない。
助手席に置いた荷物が落ちないように固定する。
スマートフォンなどは、運転中にさわないようマナーモードにするか、手の届かない所に置く。
そういった準備が必要です。
なるべくなら、荷物は助手席ではなく後部座席において、運転中はさわらないようにするのが望ましいでしょう。
安全運転は、「技術」ではなく「準備」です。何も起こらない環境を整えることが、最大の防衛策なのです。
事故は、不注意だけでなく、準備不足からも生まれます。
明日は我が身だという意識を持って、運転をするようにしてください。
準備不足や一瞬の行動が、誰かの一生を奪ってしまわないように。
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。
 
																					 
																					