
【交通安全ニュース解説コラム】第91回 「その一瞬が、すべてを変える」追突事故の現実と対策
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
6月8日、愛知県名古屋市の一般道路で、路肩に停車していたトラックに自家用車が追突し、路上作業をしていたトラックの運転者が意識不明の重体となる事故がありました。
その2日前、6月6日には、名古屋市中川区の交差点で、信号待ちの車が追突されて炎上し、追突された車両の運転者は全身にヤケドを負って亡くなりました。
さらに、5月20日には、神奈川県伊勢原市の高速道路で、停車中のキャリアカーに大型トラックが追突し、キャリアカーの運転者が亡くなるという重大事故が、そして5月7日には、愛知県清須市の高速道路で、停車中のトラックに別のトラックが追突するという事故が発生しました。
いずれの事故も、追突原因については詳細が報道されていないのですが、しっかりと前方と確認していれば、防げた可能性の高い事故だったのではないでしょうか。
一瞬のわき見が命を奪う
停車中の車両に追突する事故の原因は、大きく分けて2つ、想像ができます。
1つ目は、ながら運転などのわき見による追突事故です。
ほんの一瞬だから大丈夫だと思い、運転中にスマートフォンや書類を見る人がいます。
しかし、その1、2秒で事故は起こります。
こういった事故を、これまでに事故分析を行った3万件以上の映像で、たくさん見てきました。
ながら運転で起こす事故は「過失」ではなく「故意」であり、つまりそれは事故ではなく事件なのです。
人の命を奪ってからでは、その一瞬を後でどれだけ悔やんでも遅いのです。
「ほんの少しだから」という思いは捨て、運転中は運転に集中してください。
思い込みが間違った世界を見せる
2つ目の原因は、動静不注視です。
動静不注視とは、他の車や歩行者などを認識はしているのに、危険性を軽視あるいは危険がないと判断して注視を怠ることです。
今回のように、停車中の車両に追突する事故には、相手車両が停車しているにもかかわらず、「走行している」と思い込んでしまい、衝突してしまうケースがあります。
特に高速道路ではこのような状態になりやすいと言えます。
それは、信号や右左折をする場所もなく、走行し続けるのが前提となっている道路のため、「車が止まっていることがある」という想定をしていない人が多いからです。
高速道路であっても、故障や運転者の不調などで車両が停止している場合もあります。
停止中の車両があるかもしれないと想定をして、しっかりと前方の車両を見るようにしてください。
一般道路では、路肩での作業や宅配便の配達などのために、路上駐車をしている車がいることを想定してください。
また、やむを得ず自分が道路上で駐車をしなければならなくなった時には、追突事故に巻き込まれないためにも、必ずハザードランプを点灯し、後続車両への注意喚起を行ってください。
最後に、ながらスマホの事故によって、大切な息子さんを亡くされた則竹崇智さんのドキュメンタリー映像をご紹介します。ぜひご覧ください。
「最愛なる家族を失った被害者家族の今 この動画を見ても、あなたは、ながらスマホしますか?」
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。