
【交通安全ニュース解説コラム】第89回 踏み間違い事故は誰にでも起こる──年齢に関係ないリスク
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
5月7日、鹿児島県で踏み間違いによる事故が起きました。
自宅の駐車場にバックで止めようとした運転者が、ブレーキとアクセルを踏み間違えてしまい、自宅に併設されたサンルームに衝突してそのまま突き破り、中にいた母親を車と家の間に挟んでしまいました。
母親は、残念ながら出血性ショックで亡くなりました。
全年齢で起こる踏み間違い事故
みなさんは、この事故を起こしてしまった運転者が何歳くらいだと想像したでしょうか。
ニュースではよく「高齢者の踏み間違い事故」という見出しで報道されているため、踏み間違いの事故は高齢者が起こすものだ、と思っていないでしょうか。
実は、この鹿児島で起きた事故の運転者は、40代でした。
踏み間違い事故は、高齢者特有の事故ではなく、全年齢において起こっています。
公益社団法人 交通事故総合分析センターの調査によると、2018年から2020年の3年間で9,738件(車対列車含む)の踏み間違い事故が起こっています。
このうち、車両相互の事故件数を見ると、24歳以下が最も多い1,538件となっています。
次いで75歳以上が多く、1,315件です。
24歳以下と75歳以上は、他の年代に比べて運転者数が少ないにも関わらず、多くの事故が起こっているのです。
また、車両相互、車両単独、そして人対車両の事故類型で見ると、いずれも直進時の踏み間違いが多いのですが、人対車両においては、後退時の踏み間違いも多く起こっています。
駐車場等で後退する場合には、ペダルの確認はもちろんですが、いきなり強く踏み込まないようにして、事故を防止してください。
人が通行している場合は運転操作をやめ、通過後に車両を動かすようにしましょう。

「若さ」は保証にならない
事故分析をする中で、踏み間違い事故を起こした運転者に話を聞く機会も度々ありました。
多くの人が「自分は踏み間違えていない。車の故障だ」と言います。
踏み間違えるはずなどない、という思い込みがあると、実際に踏み間違いを起こした際にも行動を省みることができずに、ブレーキだと思って何度もアクセルを強く踏み込んでしまいます。
そのため、暴走してしまい、場合によっては人を巻き込んで死亡事故を起こしてしまうのです。
踏み間違いは、誰でもしてしまう可能性があります。
そのことを念頭に置いているかどうかで、踏み込む力をとっさに弱められるかどうかが変わってきます。
自分も踏み間違いをするかもしれない、と想定して運転をしてください。
このコラムを読んでいる方の中には、管理職の立場にあり、社員教育を担当されている方もいると思います。
交通事故には、「若いから大丈夫」というものはありません。
むしろ、その思い込みがある方が危険であるということを、しっかり伝えて、事故防止につなげてください。
(資料出典:イタルダインフォメーション 2022 No.139)
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。