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【交通安全ニュース解説コラム】第31回 自分以外から見たときあなたの運転は安全ですか?

みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
先日、宮城県で、バスが急ブレーキを踏んだため車内の乗客に怪我人が出た、というニュースがありました。バスの運転者は、前方に割り込んできたタクシーを避けようとして急ブレーキを踏んだそうです。
北海道では、トラック運転者が急ブレーキをかけて他のトラックを自車に追突させ、相手に怪我を負わせたことから、危険運転傷害の疑いで逮捕されました。逮捕された運転者は、相手トラックが自分の車両の前に右折して入ってきたことに腹を立て、600メートルにわたって危険運転を繰り返し、最終的に相手トラックの前に割り込んで急ブレーキを踏んで追突させました。

割り込んだつもりはなくても…

最初の事故に関してですが、「タクシーが割り込んだ」というのはバス側の意見であって、もしかしたらタクシーの運転者には割り込んだという認識がないかもしれないと思いました。
わざと「割り込んでやれ」と思って割り込む人は、あまりいないのではないでしょうか。
「今なら進路変更して前に入っても大丈夫だろう」と思って進路変更をする人がほとんどで、「危ないな」「ギリギリだな」と思いつつも進路変更をする人はいないと私は思っています。
割り込んだか割り込んでいないかは、運転者それぞれの感覚の違いなので、相互の認識がずれることはよくあります。
普段から車間距離を空ける人は、あまり余裕のない車間距離で進路変更して入って来られると、「割り込まれた」と受け取ってしまうでしょう。
しかし、割り込んだ側が車間距離をあまり取らない運転者の場合、その運転者は「割り込んだ」とは思いません。
また、大丈夫だと思って進路変更や右左折をしたけれど、後ろの車の速度が思っていたよりも速くて距離が詰まってしまい、結果的に「割り込んだ」ようになってしまうこともあるかと思います。
逮捕されたトラック運転者が腹を立てたのも、もしかしたらこういう状況だったのかもしれません。
認識の違いによって受け取り方が変わるので、知らないうちに後方車両の運転者にとって危険な運転をしてしまっているケースもあるのです。

誰にとっての安全運転か

以前、「安全運転とは何か」をセミナー受講者に訊いた時に、あるプロドライバーが「分からない」と返答しました。
どういうことか話を伺ってみると、「自分は速度も守っているし、安全運転をしている自信はある。でも、自分が運転するトラックを見た人が『あのトラック、結構スピードを出している』とか、歩行者の横を通過した時に『このトラックちょっと怖い』と感じてしまうと、相手にとっては安全運転ではないですよね」と答えました。
彼の言う通りで、安全運転をしていると運転者自身が言い切ることはできないのです。
「私はそういうことはないですよ」「自分は絶対大丈夫です」と断言する人は、安全運転をしていると思い込んでいるだけで、周りからしてみれば危険な運転をしていることもあるかもしれないのです。

私自身は安全運転をしているつもりです。
でも、周りの人に「割り込まれた」と思わせたことが一度もないかというと、自信がありません。
後ろの車の人の気持ちは分からないですから、気づかずに「割り込んで」しまったことはあるかもしれません。
そういう感覚、つまり「自分は大丈夫だと思っているけれど、周りにとってどうかは分からない」という感覚を持たないといけないと思います。
「大丈夫でしょ」ではなくて「大丈夫じゃないかも」という感覚を常に持つことが、事故防止にはとても大切です。
自分本位の安全運転ではなく、周りがどう感じるかを考えて安全運転をしてください。

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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。