
【交通安全ニュース解説コラム】第82回 一時停止のわずかな違反が、大きな悲劇を生む
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
1月下旬に、兵庫県加古川市の県道の交差点で、車同士の衝突に自転車が巻き込まれるという事故がありました。
この事故で、自転車に乗っていた18歳の高校生は意識不明の重体となりました。
事故は信号のない交差点で起こりました。
乗用車と軽自動車が出会い頭に衝突し、横転した軽自動車が対向車線にいた自転車に衝突したのです。
警察は、乗用車の運転者を逮捕し、詳しい事故原因について調査中です。
事故の記事には、原因は調査中と書かれていましたが、一部では「乗用車側に一時停止の標識があり、調べに対して容疑を認めている」という記載や報道がありました。
正式発表ではないので、あくまで推測にはなりますが、乗用車が一時停止義務違反をした可能性が伺えます。
一時停止の目的は出会い頭の事故防止
このコラムで何度もお伝えしていますが、
一時停止地点では必ず「一時停止線の直前で」止まってください。
一時停止の目的は、車道の往来を確認するためのものではありません。
出会い頭の事故を防ぐためのものです。
車や歩行者、自転車などの往来を見ようとすると、一時停止線を越えないと確認ができません。
しかし、それでは出会い頭の事故を起こしてしまいます。
冒頭で取り上げた事故では、衝突した相手の車が横転をしています。
かなりの速度で衝突したのではないでしょうか。
今回の事故のような状況では、優先道路を走行している車両の速度が比較的出ている可能性もあり、側面衝突によって車が大きく破損したり、横転や歩道に乗り上げてしまう事故を、ドラレコの事故分析でも多く見ます。
優先道路側の車両も、事故に巻き込まれないためには、交差点付近に来たらスピードを落とし、ブレーキに足を置く「構えブレーキ」で走行するようにしてください。
事故の大小は、当事者には決められない
交通事故の大小は、事故を起こす運転者が選べることではありません。
一時停止で止まらなかった時、車やバイク、自転車、そして歩行者がいなければ、交通事故にすらなりません。
しかし、加古川の事故のように、一時停止で止まらなかったために車両と衝突し、たまたま通りかかった自転車まで巻き込んでしまうこともあるのです。
事故を起こした時に、どこにどんな風に衝突して、誰を巻き込むかは、事故を起こした運転者は選べません。
ですから、事故の結果だけを見て「軽傷で済んだから大丈夫」と思い、事故を起こした運転行動を改めずにいると、いつかまた必ず事故を繰り返します。
被害者の命を奪わないためにも、どんなに軽微と思われる事故でも、「事故を起こした」という事実を重く受け止め、運転行動を改めなければなりません。
それは、どこかに「軽くぶつけた」だけでも同じです。
事故には違いがありません。
ぶつけた原因を解明し、運転行動を改めてください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。