Nautoのロゴ

【交通安全ニュース解説コラム】第80回 動物との衝突事故を防ぐために知っておきたいこと

みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
12月17日の夜、静岡県藤枝市の新東名高速で車が炎上するという事故がありました。
乗用車にイノシシが衝突したことが原因でした。
幸い、車両に乗っていた人は全員無事に脱出し、大きな怪我もなかったようです。
このような、動物と衝突する事故は、ドライブレコーダーの映像でよく見ます。
そして、その多くは、回避が非常に難しい状況で起こっているのです。

年間7万件の事故

車との衝突による動物の死亡事故を「ロードキル」と言います。
令和4年度のロードキルは、国土交通省直轄の国道だけで7万件起こっています。
冒頭の事故もそうですが、イノシシやシカ、そしてクマなど比較的大型の動物と衝突した場合は、車両に乗っている人が怪我をしたり、車両が大破したりすることもあります。

野生動物が道路上に出没しやすい場所には、動物注意の標識が設置されています。
「警戒標識」の一種で、正式には「動物が飛び出すおそれあり」という名称がつけられています。
描かれている動物はその地域によって様々ですが、黄色に黒枠というデザインは共通で、危険な地点の30m〜200m手前に設置されています。
動物の絵柄が書かれた黄色の標識を見たら、速度を落とすようにしてください。
また、可能であればハイビーム走行をしてください。
夜間であれば、動物の目が光るので、気づきやすくなります。

動物との事故でも通報を

万が一、動物と衝突してしまった場合は、通常の事故時と同じく警察に連絡してください。
動物は「物」として扱われるため、物損事故になりますが、道路交通法第72条で定められているように、いかなる事故であろうとも、報告を行うのが運転者の義務です。
衝突した動物がそのまま逃げてしまった場合でも、通報をしてください。
事故で動けなくなった動物には、素手で触らないようにしてください。
衛生面だけでなく、怪我を負った動物が暴れることもあり、大変危険です。
死亡した動物は、道路の管理者や自治体が対処するように定められています。
そのため、事故を起こした道路の管理者にも連絡しなければなりません。
どこへ連絡すればよいか分からない場合は、国土交通省が設置した「道路緊急ダイヤル(#9910)」に電話をしてください。

動物との衝突事故は、避けるのが難しい状況で起こるのがほとんどです。
しかしながら、ごく稀に、道路交通法違反をしていなければ防げた事故もあります。
速度超過はせず、可能な限りハイビーム走行をしてください。
動物の飛び出しに遭遇した時でも、急ハンドルで避けようとすると危険です。
ブレーキで回避するようにしてください。
ブレーキが間に合わない場合は、そのまま衝突するしかありません。

ハンドル操作で避けようとすると、他の車両と衝突してより大きな事故になってしまいます。
特に衝突事故の多いタヌキは夜行性動物です。
深夜・早朝は速度を守り、ハイビームで少しでも早く発見できるようにしてください。

=====
執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。