【交通安全ニュース解説コラム】第78回 右折が命を奪う時:知っておくべきルールと致命的なミス
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
11月19日、埼玉県で、右折しようとした乗用車が対向車線の直進車と衝突し、そのはずみで別の乗用車にも衝突してしまう事故が起こりました。
残念ながら、右折車両の運転者は亡くなりました。
大回り右折と徐行
道路交通法第34条には、右折のルールが明記されています。
「自動車、一般原動機付自転車又はトロリーバスは、
右折するときは、あらかじめその前からできる限り道路の中央に寄り、
かつ、交差点の中心の直近の内側
(道路標識等により通行すべき部分が指定されているときは、その指定された部分)を
徐行しなければならない。」
右折をする時には、この条文に書かれているように、
「大回り右折」をすること、
「徐行」をすること、を徹底してください。
大回り右折とは、右の図に青で示したルートで右折する方法です。
赤で示したルートは、いわゆるショートカット右折です。
ショートカット右折をすると、ミラーやピラーで死角になってしまう範囲が広く、時間も長くなってしまうため、非常に危険です。
徐行の速度については、このコラムで何度もお伝えしていますが、みなさんは覚えていますか。
速度10km程度での走行です。
厳密に言うと、道路交通法の第2条20項では、具体的な速度は記載されておらず、
「車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。」と書かれています。
しかし、歩行者と接触した場合の死亡率を見ると、時速10km程度まで落とすのが望ましいことが分かります(下図参照)。
時速20kmを超えると、死亡率は倍になります。
30km以上だとそこからさらに3倍も死亡率があがるのです。
冒頭で取り上げた右直事故に関しては、歩行者は絡んでいません。
続報がまだないため、事故原因についてははっきりしていません。
しかし、これまでの事故分析の経験から言えるのは、
右折車と直進車の事故では、法定速度内だったとしても、
死亡事故という大きな事故になる可能性が非常に高いということです。
なぜなら、直進車の速度が出ていることが多く、
ぶつかった時の衝撃が大きくなるからです。
右折車は進行妨害をしてはならない
道路交通法第37条には、
「車両等は、交差点で右折する場合において、
当該交差点において直進し、又は左折しようとする車両等があるときは、
当該車両等の進行妨害をしてはならない。」
と定められています。
右折を行う際は、直進車との距離と相手の速度をしっかりと見極めて、
確実に安全なタイミングで交差点内に進入してください。
もちろん、アクセルを踏み込むのではなく、時速10km程度の、
直ちに停止できる速度で進入するように心がけてください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。