【交通安全ニュース解説コラム】第6回 居眠り運転
みなさんこんにちは、上西一美です。
10月までは真夏日の気温になる日もありましたが、11月にもなるとずいぶん冷え込むようになりました。
走行中に暖房を入れる方も増えてきたのではないでしょうか。
車内に暖かい空気が充満すると、眠気に襲われることがあります。
暖房だけでなく睡眠時間や疲労度、昼下がりの時間帯などの影響で眠気を感じることがあると思います。
今回は居眠り運転についてお話します。
居眠り運転の三大リスク
居眠り運転には、非常に大きなリスクが3つあります。
一つは「重大事故になりやすい」ということです。
通常の追突事故というのは、ブレーキを踏みながらぶつかります。しかし、居眠り状態での追突事故では、その大半がぶつかってから気づく事故です。ブレーキを踏むことなく、つまり速度が落ちないまま車両に衝突するのです。これは重大事故になる大きな要因です。
居眠りでの衝突状況が交差点内などになると、車両が横転してしまうこともあります。歩行者との事故であれば、死亡事故になる可能性も高くなります。
二つ目のリスクは、「運転者が大きな怪我をする」です。
多くの事故では衝突の前に気づくので、事故回避行動を取ると同時に全身に力を入れて自分の身を守ろうとします。力を入れることによって、無防備なまま衝撃を受けるよりは怪我を抑えられます。
しかし、居眠りをしていると追突の衝撃で目を覚ましますので、衝突した瞬間は脱力状態です。無防備な状態でかなりの衝撃を受けますので、怪我はひどくなります。
これは、被害車両の運転者にも当てはまります。追突事故で被害者の方が大きな怪我をする傾向にあるのは、このような理由からなのです。
居眠り運転による事故では、加害者と被害者の双方が同じ状態になっていますので、怪我の程度も大きくなりやすいのです。
三つ目のリスクは「罰則が重くなる」ということです。
道路交通法の第66条には、「何人も、前条第1項に規定する場合のほか、過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」と書かれています。
ちなみに、前条第1項というのは飲酒運転についての定めです。
疾病や薬物の影響がありながら運転するのは論外なのですが、気を付けるべきは「過労」です。眠気を感じたまま運転する行為は「過労状態」とみなされることが多いです。
眠気を感じたままでは正常な運転ができない恐れがあるのは分かっていますよね、という解釈をされます。
ですから、居眠り運転の事故における裁判では、「過失」とは言われません。
「故意の過失」とされます。
これは危険があるのを知っていながら行為に及んだ(運転をした)ということですね。
居眠り運転防止策
ではどのようにすれば居眠り運転を防げるのでしょうか。
眠気を感じた時に多くの人は「何とかしよう」と思ってしまいます。
特にプロドライバーの方たちはその傾向が強いですね。職務における責任感からそう考えてしまうのだと思います。
何とかこの場を凌いで運行を続けようとしてしまいます。しかし、何とかしようと思えば思うほど眠気は増加するとも言われています。
一番良いのは、「諦める」ことです。諦めて、止まる。
止まってからが大事なのですが、たとえ10分でも15分でもよいので仮眠を取るようにしてください。
眠れない場合は目を閉じるだけでも大丈夫です。仮眠をした時と同じ効果が得られます。
これを読んでいるみなさんの中には、業務上、車両にお客様を乗せている方もいらっしゃるので、止まって仮眠を取るわけにはいかない方もいると思います。
そこでもう一つの対策として知っておいていただきたいのは、生体リズムを把握して調整する方法です。
眠気を感じる時間帯というのは、体のリズムで決まっています。
起きてから8時間後は1時間くらい眠気が続くと言われています。
この眠気は、しっかりと睡眠を取っていても、あるいは昼ご飯を食べていても食べていなくても感じるそうです。
普段起床している時間と、その8時間後が何時くらいにあたるのかを考えてみてください。
8時間後に運転をしなければならない場合、それ以前に仮眠を取るようにしてください。
眠気を軽減できると思います。
居眠り運転を防ぐには、まずは十分な睡眠を取ること。
そして眠たくなる時間帯を把握してその前に仮眠を取ること。
この2つは最低限行ってください。万が一それでも眠くなってしまったら、できるだけ早く止まって仮眠を取ってください。
これから年末にかけて忙しくなり、体も疲れやすくなると思います。居眠り運転を起こさないためにも、しっかりと対策を取ってください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。