【交通安全ニュース解説コラム】第43回 逆走
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
5月に入ってから、立て続けに正面衝突の事故が起こっています。
まず2日の午前3時に、群馬県伊勢崎市の国道で軽自動車が逆走して乗用車と正面衝突し、さらにそこへ他の車が追突しました。3台が絡む事故となり、軽自動車の運転者は意識不明の状態で病院へ搬送されたのですが、その後亡くなりました。
同日の午後2時には、山形県鶴岡市の高速道路にあるトンネル内で、対向車線にはみだした車両が、対向してきた車両に正面衝突し、衝突された側の車両は炎上しました。
この事故では幼児を含む3人が亡くなりました。
6日には、茨城県水戸市の国道で乗用車が対向車線にはみ出して乗用車と正面衝突しました。
はみ出した側の車両の運転者は出血性ショックで亡くなりました。
また、衝突された側の運転者と同乗していた子供たちも怪我を負いました。
いずれの事故でも、なぜ対向車線へはみ出したのかは分かっておらず、原因について詳しく調べているところです。
逆走車は気づいていないこともある
正面衝突の事故は、非常に重大な事故となる確率が高いです。
前述の高速道路の事故においては、警察によると現場にブレーキをかけたような痕はなかったとのことですから、相当なスピードで衝突したと思われます。
逆走をしている運転者は、基本的に気づかずに走行していることが多いです。
そのため、例えば深夜などの暗い状況で走行していると、気が付いた時には対向車と正面衝突をしてしまっているという状況になりやすいのではないかと思います。
人間はヒューマンエラーを起こすものです。そしてそのエラーは、自分の想定をはるかに超えます。
運転中は常に自分の目を疑い、細心の注意を払うようにしてください。
そして万が一に備えて、一般道でも後部座席のシートベルトは必ず装着してください。
ぶつかった衝撃で車のドアが開き、シートベルトをしていなかった同乗者が車外放出されるというケースは非常に多いです。
放出されて後続車にひかれたり、中央分離帯などにぶつかったりして亡くなるケースもあるのです。
シートベルトは命を守るためのものです。
検挙されるかどうかで着用を決めるのではなく、命を守るために、必ず着用してください。
リスクを排除し、場合によっては通報を
逆走した理由はいずれの事故でもまだ分かっていませんが、慣れない道で間違えたり、飲酒運転や認知症の影響、あるいは高速道路のインターチェンジやジャンクションで道を間違えて逆走してしまったりなど、過去にもさまざまな理由での逆走事故が起こっています。
昨年の冬には、助手席に乗せたペットのインコの様子が気になってよそ見をした瞬間に対向車線へはみだし、走行していた自転車をはね、さらにそのまま歩道に乗り上げて母子の乗る自転車に衝突する事故がありました。
約半年前には、居眠り運転で10分以上も蛇行運転を繰り返して対向車線へとはみだして軽自動車と正面衝突し、衝突された側の運転者が死亡するという事故もありました。
みなさんが運転をする時には、よそ見や「ながら運転」で前方不注視になるような要素は可能な限り排除してください。スマホやたばこ、食事やメイクなどは、停車してから行うようにしてください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。