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【交通安全ニュース解説コラム】第73回 緊急自動車への対応と最新技術の活用方法

みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
9月8日未明、埼玉県で警察署から緊急走行で発進したパトカーが、軽自動車と衝突する事故がありました。
翌9日には、三重県で救急搬送中の救急車と乗用車が衝突し、救急車が田んぼに落ちるという事故がありました。
いずれも詳しい状況と事故原因については調査中です。

緊急自動車が近づいてきたとき、みなさんはどのように対応していますか?

道路交通法の第39条と第40条において、緊急自動車が接近してきたときは、車両は交差点を避け、かつ道路の左側に寄って、一時停止をして進路を譲らなければならない、と定められています。
一方通行などで、左側に寄ることが緊急自動車の通行を妨げてしまうような場合は、道路の右側に寄って一時停止しなければなりません。
いずれにしても、運転者は必ず一時停止をして、進路を譲らなければならないのです。
しかし、緊急自動車の接近に気づかずに交差点内に進入したり、左に寄ることなく道を塞いだ状態で走行、あるいは停止したりしている車両が少なくありません。

外部の音が聞こえる状態で運転する

車両の遮音性があがり、以前より外部の音が車内に届きにくくなっているという現実もあり、それが、運転者が緊急自動車の音に気づきにくい要因になっているとも考えられます。
夏や冬にはエアコンを使用しているため、窓を閉めている車も多いでしょう。
エアコンを使用している時期でも、数センチで構わないので窓を開けて走行することで、緊急自動車の音にいち早く気づくことができます。

また、車内で音楽やラジオを聴いたりしていて外部の音に気づかないこともあります。
オーディオの音量は、外部の音が聞こえる程度にまで下げるようにしてください。
外の情報が取れないほどオーディオの音量を上げるのは、道路交通法の安全運転義務(第70条)違反にもなります。
なにより、外部の音に反応できる状態で運転することは、緊急自動車への対応以外にも、多くの場面で事故防止に大きく影響する運転行動でもあるのです。

最新技術の活用

最近では、「ITS Connect」を搭載している車両もあります。
ITSとは高度道路交通システムのことであり、「ITS Connect」を緊急車両と一般車両が相互に搭載していると、一般車両の車載モニターに緊急自動車の接近が表示されるようになっています。
おおよその距離と接近して来る方向まで表示されるため、運転者が緊急自動車の鳴らすサイレン等の音に気づいていなくても、モニターでその存在が把握できるのです。
緊急自動車を視認できない状況でも、一時停止をして通行に備えられます。
標準装備されている車両も増えてきていますが、まだまだ一般的ではありません。
「ITS Connect」が装備されていない車両に乗っている運転者は、もしも自分の車両の近くで停止する車両に気づいたら、オーディオを止め、窓を開けて外部の音を確認するように心がけてください。

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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。