【交通安全ニュース解説コラム】第37回 意識してますか?意外と危険な「進路変更」
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
先日、東名高速道路で走行中の車両がウィンカーを出すと同時に右へ車線変更し、右斜め後ろを走行していたキャンピングカーと衝突するという事故がありました。
怪我人は出ませんでしたが、衝突により破損したパーツが反対車線へと飛び散る様子がドライブレコーダーの映像に映っていました。飛んで行った破損パーツが、反対車線での事故を誘発していた可能性もあります。
事故後の取材で、キャンピングカーの運転者の声が収録されていました。事故の危険予知はできているようでしたが、 “事故に巻き込まれない”ための運転行動にはつながらなかったようです。
進路変更は危険な行為
進路変更はそもそも“危険な行為”だと、私は認識しています。進路変更をする際には、前方と後方の確認を、動きながら同時にしなければならないからです。道路交通法第26条で「車両は、みだりにその進路を変更してはならない」と定められているとおり、できるだけ進路変更はしない方がいいです。
条文にはこのほかにも、後方から進行してくる車両の速度や方向を急に変更させるおそれがある時には進路変更はしてはならないことが書かれています。
冒頭で取り上げた交通事故は、接触した2台のうちの加害車両が、反射的な進路変更を行ったために発生しています。しかし、その行動の背景としては、加害車両の左側の出口車線を車線を走っていた別車両が、突然進路変更をして本線に戻ろうとしたことが影響していると考えられます。
このような進路変更時の事故は、道を間違えた場合に多く発生しています。間違えた道から正しい道に戻ろうとする時、ほとんどの人は焦りを感じた状態にあります。慌てていると、人間は安全確認をするよりも先に体が動いてしまいがちです。認知⇒判断⇒動作の順ではなく、動作をした後に認知行動、つまり、安全かどうかを目で見て確認しようとするのです。
道を間違えてしまった時には、急な進路変更で戻ろうとするのではなく、そのまま走行して余裕のある状態で正しいルートに戻るようにしてください。
今回の事故で言うと、最も左側の車線を走行していた車は、出口車線から本線に戻るのではなく、そのまま高速を降りて、ひとつ先の入口から再び高速道路に入るようにしなければなりませんでした。
自転車の進路変更には要注意
キャンピングカーの運転者は事故後の取材に対して「出口付近にいた車が不審な動きをしていて危ないとは思っていた。(前に)入られたら事故になるというのは感じていた」と話していました。
運転者は、危険予知まではできていたのです。
しかし、この危険予知が「速度を落とす」という事故回避のための運転行動へ結びついていませんでした。
事故に巻き込まれないためには、危険予知の後の運転行動が非常に重要です。
少しでも危険を感じたら、速度を落としたり、アクセルから足を離して構えブレーキにしたりしてください。
車両だけでなく、バイクや自転車の進路変更にも十分注意が必要です。
特に、自転車は後方確認をせずに進路変更するケースが多く見られます。
自転車と接触してしまうと、死亡事故につながる可能性が非常に高くなります。
接触時の衝撃がそのまま怪我につながるのはもちろんですが、スピードがあまり出ていない状態で接触しても、自転車の運転者が転倒した際に頭を強打し、それが原因で死亡してしまうケースもあるのです。
高速道路の出入り口付近や、交差点やその付近では、前や横の車両が急に進路変更するかもしれないという想定のもとに運転をしてください。
自転車やバイクを見たら、後方確認せずに進路変更するかもしれないことを疑ってください。
そして、危険予知をしたら回避行動を取るようにしてください。
ひとつでも想定を増やして、交通事故を防止できる運転者になってください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。