【交通安全ニュース解説コラム】第67回 運転は適切な服装で
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
ずいぶん暖かくなってきました。
地域によってはすでに夏日のような、暑い日が続く所もあるようですね。
服装も冬から春、夏物へと替わっているのではないでしょうか。
みなさんは、車を運転する時の服装が、道路交通法によって定められているのをご存じでしょうか。
正確に言うと、道路交通法では、「この服装は駄目である」「この履物で運転してはならない」と明記されているわけではありません。
道路交通法第70条の、安全運転の義務を定める条文には「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」と記載されています。
これによって、かかとのないサンダルやスリッパ、そしてハイヒールの靴などでの運転では、安全義務違反として検挙される可能性があります。
かかとのないサンダルやスリッパなどは、運転中に脱げてしまう恐れがあります。
脱げた際に操作を誤ってしまう危険性や、脱げた履物がペダルの間に挟まってしまい、ブレーキが効かずに事故を招いてしまう可能性があるのです。
また、ハイヒールの靴が違反とされるのも、正しいペダル操作ができないためです。
続く第71条では「車両等の運転者は、次に掲げる事項を守らなければならない。」と定め、その6項において「前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」と記載しています。
各都道府県の公安委員会が定める「道路交通法施行細則」で、違反となる履物を明記している都道府県もあり、これによって明らかな違反として検挙される場合があるのです。
たとえば東京都では「木製サンダル、げた等運転操作に支障を及ぼすおそれのあるはき物をはいて車両等(軽車両を除く。)を運転しないこと。」と定めています。
このほかにも、大阪府では「げた又は運転を誤るおそれのあるスリッパ等を履いて、車両(軽車両を除く。)を運転しないこと。」としており、栃木県では、「自動車又は原動機付自転車を運転するときは、木製サンダル、下駄等を用い、又は運転操作に支障を及ぼすおそれのある姿勢をし、若しくは服装をしないこと。」と、姿勢や服装についても定めています。
服装について詳細を定めている細則はあまりありませんが、着物での運転については、道路交通法に抵触する可能性があります。
かつて福井県で僧衣を着用して運転していた人が検挙されたことがありました。
当時の福井県警では、検挙理由として「袖がシフトレバーなどに引っかかる」「足が動かしづらくブレーキ操作が遅れる」という判断をしたことを挙げていました。
これは全国的にもニュースとなり、SNSでは「#僧衣でできるもん」というハッシュタグをつけ、様々な動画が投稿されたりもしました。
いずれにしても、運転に支障をきたすような服装や履物での運転は、しないようにしてください。
外出先でハイヒールなどを履く必要がある場合は、運転時にはスニーカーなどに履き替えて、安全運転に努めるようにしてください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。