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【交通安全ニュース解説コラム】第3回 夕暮れ時の人身事故

みなさん、こんにちは。ディ・クリエイトの上西一美です。
今回は夜間走行における事故防止のポイントを、お伝えしていきたいと思います。
まだまだ暑い日が続きますが暦の上ではすでに秋を迎えており、徐々に日没時間も早くなっていきます。
この時期に増加するのが、夕暮れ時の人身事故です。

秋は日没前後の時間に事故が増加

警察庁では日没前後の1時間を「薄暮(はくぼ)時間帯」として特に注意喚起しています。
もともとこの時間帯は事故が多いのですが、毎年7月以降徐々に増え、10月から12月の間は最も多く発生します。
薄暮時間帯に起こる自動車と歩行者の死亡事故で見てみると、約9割は歩行者が道路を横断している時に起きています。そのうちの約8割が横断歩道以外を横断しており、さらにその約7割に法令違反があったという統計もあります。
自動車側からすると想定外の所に歩行者がいる状況であり、暗くて見えないという要因も相まって事故となってしまうのです。
事故の特徴として挙げられるのは、日没前後2時間の事故発生件数が、昼間に比べて4倍も多いこと、そして日没後の方が日没前より5倍多いという点です。

薄暮時間帯の事故防止として重要なのは、
1 速度を守る
2 可能な限りハイビームで走行する
3 違和感を覚えたらまずは減速する
という3つのことです。

 死亡事故となってしまったケースでは、運転者が危険を認知した時の速度が40km/hから60km/hという調査結果があります。周囲の暗さの変化に目が慣れていない夕暮れ時には、歩行者の発見が遅れることも考えられます。速度は必ず守るようにしてください。

基本はハイビーム

次に大きなポイントとなるのは、前照灯の使い方です。
道路交通法の第五十二条には、夜間は前照灯を点けなければならないということが定められています。第2項では、他の車両の後ろに位置する時や対向車がある時は、ロービームにするよう規定されています。
前照灯は「道路運送車両の保安基準」という法令において、ハイビームは走行用前照灯、ロービームはすれ違い用前照灯と区分されています。
つまり、走行時の基本はハイビームなのです。
みなさんは普段どちらの状態で走行しているでしょうか。

ハイビーム走行時には前方約100メートルまで視認できますが、ロービームでは約40メートル程度となります。
先の五十二条にあるように、他車の走行を妨害しないためにも、交通量の多い状況ではロービームにしなければなりません。しかし先行車や対向車がいない場合は、歩行者をいち早く捉えて事故を防止するためにもハイビームにしておかなければならないのです。

注意をするのではなくブレーキを踏む

最後に挙げた「違和感を覚えたらまずは減速する」というポイントですが、これはすごく重要なことだと思っています。
違和感というのは、例えば対向車がパッシングやハイビームにした場合などです。そういった場合には「何かある」と思ってもらった方がいいです。
「何だろう」と思いながらもスピードも落とさずに走行していては、たとえ注意をしていたとしても夜間の歩行者との事故を防ぐのは非常に難しいと思います。
違和感を覚えたら「注意をする」のではなく、ブレーキを踏むという「行動に移す」ようにしてください。

 横断中の事故に遭う歩行者は、高齢者が非常に多いです。高齢の方は、目先のリスクに強くて次のリスクには注意がいきにくくなるという傾向があります。ですから、自分の右側から走行してくる車にはきちんと注意を払い安全を確保するのですが、次の車線の車、つまり左側から走行してくる車への対応がおろそかになってしまい、事故に遭ってしまいます。運転者にとって右側から出てきた歩行者と接触する事故は、夜間になると件数が増え、高齢歩行者では7割から8割を占めるのです。
子供の場合は逆で、危険感受性が低いのでポンと道路に飛び出してしまい、右から来る車にはねられるケースが多いですね。

これからの季節、特に日没前後の時間帯には、早めにライトを点け法定速度を守って走行するようにしてください。
そして違和感がある時はブレーキを踏んで速度をさらに落としてください。

 

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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

 1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。