【交通安全ニュース解説コラム】第7回 車間距離保持の重要性
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
10月も終わりに差し掛かった頃、新潟県で大型トレーラーが横転するという衝撃的な事故がありました。
事故原因は対向車線を走行していた自家用車の、車線はみ出しによる正面衝突です。
中央ラインをはみ出した自家用車が、トレーラーのヘッド右側に衝突しました。
その衝撃でトレーラーは急に右ハンドルを切らされた状態になり、コンテナの重さも加わって遠心力で横倒しになりました。
幸い、この事故による死者は出ておりませんが、11月に入ってからも中央ラインはみ出しによる正面衝突の事故が相次いでおり、中には死亡事故となってしまったものもあります。
新潟の事故では、事故原因となった車両の後方を走っていたトラックのドライブレコーダーが、事故の瞬間を撮影していました。
その映像をご提供いただいて、YouTube番組の方で取り上げさせていただいたのですが、実はその映像で私が何より感銘を受けたのは撮影車両であるトラックの車間距離と走行速度でした。
トラックは事故車の2台後ろを走行していました。
法定速度を守り、前の車両との距離は30メートル以上を保持していました。
この事が、トラックの運転者を守る事につながりました。
車間距離がもっと詰まっていたら、トラックはおそらく、横転して猛スピードで横滑りするトレーラーともっと激しく衝突して大破していたのではないかと思われます。
車間距離を開けていると、事故に“巻き込まれる”確率を下げられるのです。
以前、私自身が体験したのですが、阪神高速道路を走行していたら前を走っていた車が壁に激突して止まってしまった事がありました。
車間距離を十分に取っていたので、巻き込まれずに済みました。とっさの事故に対しても対応が出来るんですね。
しかし、私の数台後ろではトラックが前の車両に追突してしまっていました。前の車両との車間距離が近かったんですね。
皆さんは普段、車間距離をどのくらい開けていますか?
とある運送会社様で研修をした際、運転者の方で車間距離は15m程度と答えた方がいらっしゃいました。
これは、理論的に言うと絶対に追突する距離です。
私たちが前方車両のブレーキランプが光るのを見てブレーキを踏むまでの時間は、早くて0.7秒くらいです。
時速60km/hだとブレーキを踏んでからの車両の停止距離は44mですから、車間距離を15mしか取っていなかったら、絶対にぶつかってしまいますよね。
私は通常50km/h程度で走行しているので一般道は40m、高速道では速度も速くなりますから80mの車間距離を目安としています。
ではその距離を、走行しながらどうやって測るのか。私は車線境界線で距離を測っています。
一般道では白線の長さが5mで線と線の間が5mです。高速道では、8mの白線と12mの間隔になっています。
つまりどちらも、前の車両との間に4本の白線があれば、私が目安としている車間距離が保持出来ているということになります。
最初のうちは白線を数えながら確認しなければならないと思いますが、慣れてくれば数えなくても距離を保持できるようになります。そうなれば、習慣化していると言える状態です。
法定速度を守っていれば、一般道でも高速道でも白線の本数は3本でも大丈夫かとは思います。
なぜ私が40mと80mにしているかというと、「わき見」をどうしてもしてしまう性格だからです。
気になる物を絶対に見てしまう性格だと把握しているので、距離を長めに取っています。
わき見というのは平均して約2秒と言われています。
私は気になる物が視界に入ってきたら、ついそちらの方を見てしまう。それが人よりも多いのではないかなとさえ思っています。ですから、人よりも2秒多めの車間距離になるようにしているのです。
わき見をふまえた車間距離と速度遵守が身を守るということを、皆さんもしっかり心に留めておいていただきたいと思います。
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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。