【交通安全ニュース解説コラム】第4回 歩行者の交通違反による事故
みなさん、こんにちは。ディ・クリエイトの上西一美です。
先日、高知県で歩行者とバイクの接触事故があり、歩行者が書類送検されるという非常に珍しいケースがありました。
幸い死者は出なかった事故ですが、接触のはずみで転倒したバイクの運転者が、左手を骨折しました。
事故の原因は、歩行者の信号無視でした。
私は今、「Respect the Law 38」というプロジェクトを賛同企業の皆様とともに進めています。
これは道路交通法第38条を守り、歩行者優先を「当たり前」にすることを目的とした活動です。
しかしながら、一方で、冒頭の事故のように歩行者の信号無視や横断歩道以外の場所での無理な横断という状況で交通事故が起こっている現実もあります。
そんな事故を起こさないために、車の運転者はどうすれば良いのでしょうか。
絶対に速度超過をしないこと
対策はいくつかありますが、最も有効なのは「速度超過をしない」ということです。
速度超過をすると事故に遭いやすくなるのは、当たり前のことですね。
皆さんもご存じだとは思いますが、速度超過していると、相手に気づいてからブレーキを踏んでも停止距離が延びるため事故になる確率が非常に高くなります。
事故映像分析でも、歩行者の信号無視や無理な横断による事故を何件も見てきました。
こういった事故で、例えば歩行者が横断禁止場所を横断していたとすると、車の過失と同時に歩行者にも過失が取られます。ただし、この時に車側に速度超過があれば、過失割合が逆転して車側の過失が高くなります。
過去に、私がコンサルタントを務める企業で同じような事故がありました。
直進していたトラックが、横断禁止場所を横断していた歩行者と接触してしまいました。トラックは時速10kmの速度超過をしており、歩行者の方は事故から3日後に亡くなられてしまいました。トラックの運転者には執行猶予がつきましたが、懲役1年8カ月の有罪判決が下されました。
その裁判で裁判官は「速度超過がなければ歩行者の方が亡くなる事はなかったかもしれない」と話しました。
相手を守り、自分を守る
このケースのように、速度超過すると自分を守れなくなります。刑が重くなることもあるのです。
速度を守ることが自分を守ることにつながります。
そしてそれ以上に制限速度を守る大事な理由があります。
それは「相手を守る」ということです。
車と歩行者の事故において、車の速度が上がれば上がるほど歩行者の死亡率は上がります。
例えば時速20~30kmの場合、歩行者の死亡率は0.9%です。速度が30~40kmになると2.7%と3倍にもなります。さらに速度が10km上がると7.8%とやはり3倍近く歩行者の死亡率が上がります。
「たかだか10kmオーバーくらい」と思っている方ももしかしたらいるかもしれませんが、その10kmが人を死なせてしまう確率を3倍にもしているのです。
その事実をしっかりと自覚して、運転していただきたいと思います。
死者を出さず、自分を加害者にしないために
残念ながら速度超過の話になると、「みんなやってますよ」というコメントをする方がいます。
「みんながやっているからやる」という理論は通用するわけがありません。
「道がすいているから、スピードを出さなければ後続車に迷惑がかかる」という方もいます。これは私からしたら屁理屈でしかありません。
皆がやっていても自分はやらないという思考をしっかりと持ってください。
死亡事故を起こした時に、「みんながやっているから。後続車に迷惑がかかるから速度超過をした」といった理由を述べても、正論として通用しません。
最終的に責任を取るのは運転しているあなたです。
周りに迷惑がかかろうが関係ないのです。
法律で定められた速度を守り、事故を起こさないことが何より大切です。
無理な横断をする歩行者との事故だとしても、車側に速度超過などの違反があれば「加害者」となってしまうこともあり得るのです。
相手を死なせないため、そして自分を「加害者」にしないためにも、法定速度は必ず守ってください。
そして、たとえ青信号でも歩行者らしきものが見えた時点で減速するようにしてください。
=====
執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。