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【交通安全ニュース解説コラム】第64回 外国人ドライバーの受け入れに向けて

みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。

突然ですが、みなさんは「特定技能制度」を知っていますか。
一定の専門性や技能を持つ、即戦力となり得る外国の方々を、労働者として受け入れる制度です。
今年4月から、この「特定技能制度」に新たに4つの分野の業種が追加されました。
その中の一つが、バス、タクシー、トラックの3事業で構成される「自動車運送業」です。
これは、車を運転するみなさんの生活に、直接影響を及ぼすことになります。
運送事業においては、2024年問題の影響もあって深刻な人手不足が叫ばれていますから、外国人ドライバーを増やすこと自体はすごく良い動きだと感じています。
一方で、外国人ドライバーが増えることでこれまで以上に注意が必要になることも、意識しなければなりません。

環境が違えば常識も変わる

外国人ドライバーが参入するのは、いわゆる「プロドライバー」の世界です。
これまで私たちが「プロドライバー」として認識してきたのは、日本の自動車学校で運転を学び、日本の習慣の中で育ってきた人がほとんどで、運転における共通認識、いわゆる「常識」も、一般のドライバーのそれとさほど変わりませんでした。
ところが、外国人ドライバーとなると、育った環境が違うので、「常識」もそれぞれ違ってきます。
国によって交通事情も、運転のルールも習慣も違いますから、常識とされることが違うのは当然です。

運転中は危険予測が大切だと常々お話ししていますが、その危険予測も、言ってみれば自分の常識をあてはめて相手の動きを予測するということです。
「普通は」という言い方や「常識的に」という言い方をする方も世の中には大勢いますが、この表現をする時点で、自分の「常識」を相手に当てはめているわけです。
あなたが「常識」だと思っている行動は、日本とは交通ルールが違う国で運転をしてきた人にとっても「常識」だとは限りません。
もちろん、外国人ドライバーとはいえ「プロドライバー」として仕事をするわけですから、日本の交通ルールに則って、プロとして運転をするとは思います。
受け入れる側の企業でも、しっかりと運転指導をしてくれるでしょう。
しかし、慣れない場所、慣れない交通ルールの中での運転です。
日本人でさえ、知らない道で車を運転する時に、カーナビの道案内に慌ててハンドルを切ったり、曲がり角を間違えて急停止したりする人もいます。
そういう場合でも、予測ができずに事故をおこしてしまうことがありますよね。
これまで違うルールの中で運転をしてきた外国の方が、日本の交通ルールに慣れるにはやはりそれなりに時間がかかると思います。
慣れないことが原因で図らずも危険な事態が起きてしまう可能性は、十分に考えておかなければなりません。
不慣れな状況に焦り、最善ではない判断をしてしまうというのは、国籍に関わらず起こり得ることなのです。

これは、どちらが正しいとか正しくないとか、そういう話ではありません。
もちろんそれぞれが法律を遵守している必要はありますが、その上でそれぞれの「当たり前」や「常識」が異なる可能性があるということです。
だからこそ、自分の「常識」が当てはまらないかもしれないという意識を持って、危険予測をする必要性が、今後さらに出てくるのです。
今後、運転環境が変わってくることは否めないでしょう。
事故防止のためには、車間距離を空けて走行するようにしてください。
特に死角の多いトラックやバスの近くを走行する場合は、前後だけでなく、左右の車間距離も取るようにしてください。
それが、事故を防ぐ運転の「常識」であることは、唯一、世界共通だと思います。

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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。