【交通安全ニュース解説コラム】第60回 危険な思い込み
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
2月9日、茨城県で非常に衝撃的な事故が発生しました。
高校生が約20分、距離にして約9kmも車に引きずられ、死亡してしまったのです。
高校生は車両の前方部分の下敷きになっており、体中に傷や出血があったということです。
本当に痛ましいことだと思います。
引きずった車両のボンネットやフロントガラスには損傷がなかったため、高校生は何らかの理由で道路に倒れていた可能性があると見られています。
運転者は「異音がしたため車を止めて確認した」と証言しているようですが、車を止めるまでに9kmもの長い距離を走行しています。
それまで気づかなかったというのには、疑問を感じます。
だろう運転ではなく、かもしれない運転を
以前にもこのコラムで書いたことがありますが、人を引きずってしまった運転者の多くは、「人だと思わなかった」と後に証言することが多いです。
このような事故は残念ながら度々起こっています。
走行中に何かを踏んだり、何かに乗り上げたりした場合は、「人かもしれない」と考えて、必ずすぐに確認してください。
これまで人を下敷きにしてしまった事故では、すぐに車を止めて救護していれば助かったであろうケースがいくつもありました。
「ゴミか何かだろう」ではなく「人かもしれない」という、“かもしれない運転”をしてください。
たとえ人だと思わなくとも、運転者として、異音がしたらすぐに車を止めて確認するようにしてください。
異音がしているということは、普通ではない状態なわけですから、車両トラブルの可能性も考えて、すぐに車を止めるべきなのです。
車両トラブルによって事故を起こすことも多々あるからです。
人に衝突した場合、その相手を死なせてしまうものに乗っていることを、改めて認識してください。
早めのヘッドライト点灯とハイビーム
今回の事故は夕方6時頃に起こっています。
薄暮時間帯にあたり、事故が起こりやすいとされています。
40代以降の人は、視力、認知力、判断力、そして反射神経が加齢によって衰えていることを念頭に、運転をするようにしてください。
特に40代の人は、衰えているのに自覚症状があまりないため、若い時と同じように運転してしまうので、注意が必要です。
夕方5時には、前照灯をつけてください。
自分が見やすいだけでなく、自転車や歩行者にとっても、ライトが点いていることで車を認識しやすくなります。
また、交通量の少ない場所などでは、ハイビーム走行をしてください。
ロービームでは前方約40mしか見えませんが、ハイビームでは約100m先まで見えるため、2倍以上遠くから歩行者を発見できます。
少し前のデータになりますが、警察庁が調査した平成28年に発生した255件の事故では、126件がハイビームであれば事故を回避できたという結果でした。
参考:ハイビームの上手な活用で夜間の歩行者事故防止|警察庁Webサイト
事故を起こさないために、できる限りのことを行ってください。
路上に何かがあることに気づいたら、何だろうと思いながらも走行するのではなく、徐行、あるいは停止して確認してください。
「人かもしれない」と思うことで、救える命があることを忘れないでください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。