皆さまはじめまして。交通事故防止コンサルタントの上西一美です。ドライブレコーダーを活用した事故撲滅コンサルティングや交通事故防止セミナーを全国で行っています。
これから全12回連載で、交通事故はなぜ起こるのか、現実的な事故対策とは何か、そして事故防止におけるドライブレコーダーの有効性についてお話していきたいと思います。

ターニングポイントとなったドラレコ映像

交通事故防止コンサルタントになって早17年になります。それ以前は神戸市内のタクシー会社の社長でした。事故の多い会社で、社長に就任してからは事故撲滅の対策を日々模索していました。そんな中で知ったのがドライブレコーダーの存在です。たまたまインターネットで見たドラレコの映像が、その後の人生を変えるきっかけにもなりました。

映像は、首都高速を走っているタクシーの左前を走行していたバイクが、中央分離帯に激突して転倒し、そのバイクをタクシーが轢いてしまったものでした。見た後に非常に怖くなりました。事故の映像から直接受ける恐怖というより、自分の運転が怖くなった。この状況であれば、自分もバイクを轢いてしまうのではないかと。そこから私自身の運転の仕方が変わりました。これまでは前の「車」に対してしか意識していなかったのですが、左前のバイクに対しても車間距離を取るようになりました。注意を払うようになった。映像を見たことで自分の運転の習慣が変わったのです。

ドライブレコーダーを見て運転習慣が変わったことで、社員に見せれば同じように運転習慣が変わり、事故がなくなるのではないかと思いました。当時勤務していた600人のドライバーに、彼らの運転の行動パターンを変えるという目的で映像を見せる取り組みを開始しました。他にも様々な対策をしていた影響もありますが、ドライブレコーダーの映像を使用した研修を始めて以降、事故件数がそれまでの2割程度に激減したのです。

なぜ交通事故が起こってしまうのか

コンサルタントとして独立してからは、企業コンサルに加え、事故防止のための研修やセミナーを年間400件以上行っています。この仕事をする中でたどり着いた結論が、交通事故の最大の原因は「見落とし」だということです。

運転というのは、「認知・判断・動作」の繰り返しです。まず「認知」から始まります。認知の次が「判断」。そして「動作」になる。
認知とは、車や歩行者、道路などの情報を目から入れること。判断とは、そこで止まるのか、曲がるのか、自分がどういう運転をするのかを決めること。そしてその結論に基づいて行われる「動作」が、ブレーキを踏んだりハンドル操作をしたりするということです。

すごく当たり前のことですが、わざと事故を起こす人はいません。だから交通事故で人が亡くなってしまっても基本的には殺人罪の適用にはなりません。適用されるのは「自動車運転過失致傷罪」ですね。過失という言葉が付くことから分かるように、どこかでミスを犯しているのです。そしてそのミスは認知、判断、動作のどこかでしか起こらない。
数多くの交通事故を分析した経験から確信を持って言えるのは、認知の段階にすごく多くのミスが起こっているということです。いわゆる「見落とし」です。交通事故の多くは、「見落とし」によって起こってしまうのです。

次回は運転の行動パターンについて、経験を積むことでどう変化するのか、見落としを減らして事故をなくすためには何が重要なのかについてお話したいと思います。

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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。