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【交通安全ニュース解説コラム】第92回 「自分だけは大丈夫」その油断が事故を招く ─年齢を問わず見直すべき運転意識─

みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
私は今、Yahoo!のエキスパートコメンテーターとして、交通事故に関するコメントを書いています。
先日、免許返納に関するニュースにコメントしました。
この記事では、80代の父親に免許返納を促す方が取材され、説得の難しさについて語っています。
高齢者になるとやはり身体能力が衰えますから、事故を起こすリスクも高まります。
しかし実は、この身体能力の衰えというのは、「高齢者」と呼ばれる年齢になってから起こるものではないのです。
もっと早い時期に、肉体は衰え始めます。
視力は20歳前後をピークに後は徐々に低下していくと言われています。
老眼になるかどうかだけではなく、動体視力や周辺視野なども当然衰えていきます。
また、反射神経も同様に20歳前後をピークに、衰えていきます。
普段の生活の中では、その変化にあまり気がつくことはないかもしれません。
20代の頃と変わらないだろうと考えている方は、一度、20代の頃にしていたスポーツやゲームなどをしてみると、若い頃との違いに気がつくのではないでしょうか。

認識を改めて事故防止を

そしてもう一つ、事故を起こすリスクが高い人に共通する特徴があります。
私はこれまで、交通事故を繰り返す運転者と、数え切れないほど面談をしてきました。
その中で、必ず共通しているのが、「自分だけは大丈夫」という認識を持っていることです。
高齢者の事故は、社会問題となっています。しかし、高齢者すべてが、事故を起こすわけではありません。
事故を起こす人は、自分の能力を正確に捉えず、その自覚がない方です。
これは高齢者に限らず、すべての年代に当てはまることです。
身体能力や視力の衰えは、止めることはできません。
しかし、その身体能力や視力に合わせた運転をすることで、事故を起こす確率は下げられるのです。
能力の衰えを受け入れず、自分だけは大丈夫という認識を持つ運転者は非常に危険です。
長年、交通事故を起こしていない運転者は、特に、根拠のない自信を持ってしまう危険性があります。
今まで大丈夫だったからこれからも大丈夫、という根拠のない自信は捨ててください。さらに、いつ事故を起こすかわからないという意識を持ち続け、以前よりも慎重な運転を心がけることで、事故を防止できる可能性が上がります。
まだ高齢者ではないから、これまで事故を起こしたことはないから、というのは、何の根拠にもなりません。
高齢者が起こした交通事故のニュースなどを見て、「自分は高齢者ではないから関係ない」と思う人ほど、危険であることを認識してください。
その思い込みがある以上、自身の身体能力の変化に気づくことはないからです。
でも、加齢とともに確実に変化はしています。
能力は日々衰えていくのだと認識して、車間距離を確保し、時間にゆとりを持って運転をするようにしましょう。
歳を重ねるごとに、集中力も長続きしなくなります。
長時間の運転は避け、適度に休憩を挟むようにしてください。
今の能力に合わせた運転を、心がけてください。

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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。