
【交通安全ニュース解説コラム】第88回 止まっている車に追突?意外と多いその原因とは?
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
千葉県柏市で起こったとある衝突事故の映像が、先日、ニュース番組で取り上げられ、Yahoo!ニュースで公式コメントをしました。
渋滞中で停止していた車に、後ろの車両が追突してしまった映像です。
追突した車両の運転者は、走行してきて止まらずにそのまま衝突したのではなく、止まっている状態から、先行車が動いていないにも関わらず発進してしまい、追突してしまったのです。
先行車が動いたかを確認してからアクセルを
実はこういった事故は、追突事故の典型的なパターンでもあります。
渋滞や信号待ちで、止まった状態で手元のスマートフォンなどを見ている時によく発生します。
目の前の車両が進んだかではなく、横の車が動いたことで自分も進めると勘違いをして、発進してしまうためです。
実際に、千葉の事故では、追突した側の運転者は「隣の車線にいた車が動き出したので、わき見をしたまま発進したらぶつかった」と証言しています。
隣の車線の車両が動き出しても、顔を上げて自分の前にいる車両が動くのを確認するまでは、アクセルを踏まないようにしましょう。
だろう運転による追突
話は変わりますが、もう一つ、追突事故でよくあるパターンが、「だろう運転」による事故です。
これは、先行車両が右左折をする時に起こりやすいケースです。
先行車の指示器を見て「自分が右左折をする場所に到達する頃には、先行車は曲がり終えているだろう」
といった予測をして、スピードを落とすことなく走行し、予測通りに相手が動かなかった場合に追突してしまうのです。
だろう運転というのは、相手がたまたま自分の予測通りに動いた時にしか成立しない、ということを理解しなければなりません。
だろう運転の判断基準は、「自分ならこうする」というものです。
しかし、この基準による予測に合致する動きをするには、相手が自分と同じ判断能力があり、自分と同じ認知をしている必要があります。
しかし、相手は自分と同じだけの運転経験があるとは限りません。
また、相手の視界に入っている歩行者や自転車が、自分には見えていないこともあります。
そうするとその予測は、いとも簡単に外れてしまいます。
先行車が「自分にとって予想をしていなかった動き」を取ったことになり、事故へと発展するのです。
これからゴールデンウィークが明けるまで、全国各地で渋滞が起こりやすくなります。
普段運転をしない人が運転をして、遠出をすることもあるでしょう。
走行時だけでなく停車時にも車間距離を空けるようにしましょう。
また、長時間の運転では適度に休憩を挟み、リフレッシュするようにしてください。
注意力が散漫になると、隣の車が動いた時に、思わず自分も発進してしまいます。
休憩を挟んだり、運転を交代したりして、事故防止に努めてください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。