【交通安全ニュース解説コラム】第2回:雨天時の事故
みなさん、こんにちは。ディ・クリエイトの上西一美です。
お盆前から九州・中国地方に降り始めた長雨は、豪雨となって各地に甚大な被害をもたらしました。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
今回の雨は3年前の「西日本豪雨」の雨量を超える地域もあったそうです。豪雨の中での運転は、雨によるスリップ事故のほか、視界不良の事故や水没も少なくないため、極力運転は取りやめていただきたいと思います。
しかし、そのような大変な天候でもやむを得ず、車を運転して通勤あるいは営業に回られる方もいらっしゃったと思います。
今回は、雨天時の事故についてお話したいと思います。
レベルを合わせる
みなさんは、雨の降り始めと止んだ直後ではどちらの方が事故は起きやすいと思いますか?
この質問をセミナーなどですると、降り始めと答える方が割りといらっしゃいます。
たしかに、雨の降り始めというのは路面のほこりなどが浮いてきてオイル状になったりするため、路面の状況としては危険な状態になります。
しかし私が最も事故に気を付けなければならないと感じるのは、路面の危険度と運転者が感じている危険度のレベルのミスマッチが起こってしまうタイミングです。
例えば、雨の降り始めはフロントガラスに雨が当たることで、ほとんどの方は「雨が降ってきたな。気を付けなければな」あるいは「怖いな」と思って、速度を落としたり車間距離を開けたりします。
ところが、止んだ直後というのはその逆で、「もう大丈夫かな」と思い始めてしまうのです。
その時の路面の状態はどうかというと、雨が降っている時と何ら変わりはないのです。
実際にこれまで2万件を超える事故映像を見てきましたが、雨が止んだ直後や小雨の時に事故は多く起こっています。
「もう大丈夫」「このくらいなら大丈夫」という意識とは裏腹に、路面は危険な状態です。
みなさんの意識を、道路の危険度レベルに合わせていただきたいと思います。
指示を明確に
8月中旬の豪雨やこれから訪れるであろう台風による豪雨など、管理職の方は異常気象の時にどのような指示を出しているでしょうか。
車で社外に出ている社員たちに「安全な場所に避難してください」と指示していませんか?
皆さんにとっての「安全な場所」とはどこでしょうか。
全員が同じ場所をイメージするでしょうか。
おそらく人によって違うと思います。安全な場所というのは人それぞれ「感覚的に」思い描きます。
この「感覚まかせ」にした指示は非常に危険です。伝えた側と受け取る側にギャップがあるからです。
どこに避難するのか具体的な場所を伝えてあげてください。指示する時は必ず明確にしてください。
GPSでどこにいるか把握できる会社であれば、はっきりと具体的な場所を指定してあげてください。
また、ドライバーの方は、自分自身だけで判断はしないでください。
なぜなら自分だけで導き出した「安全な場所」が100%正解というわけではないからです。
誰かに相談してください。あるいは会社に連絡を入れて「安全な場所」がどこであるか確認を取ってください。そして、自分と相手の意見がマッチする場所に避難してください。
雨天時の運転の仕方
みなさんは「減速路面標示」をご存じでしょうか。
右の図の破線マークです。このマークがある場所ではしっかりと減速をしてください。事故率が高い場所です。
雨天時の運転では普段よりも10㎞/h以上は速度を落として走行していただきたいのですが、この減速路面標示がある場所ではさらに速度を落とすようにしてください。
高速道路で50km/h制限になっている場合は、本当に危険な状態というサインです。速度を落として走行してください。
雨の中の運転には常に危険が伴います。
普段よりも10㎞/h以上は速度を落とし、車間距離は通常より1.5倍以上確保し、ライトを点灯させて事故の被害に遭わないように工夫をしてください。
これから「秋の長雨」と呼ばれる季節も訪れます。
雨天時には、晴天時と同じ運転はしないよう心掛けてください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。