【交通安全ニュース解説コラム】第5回 飲酒による事故
みなさん、こんにちは。ディ・クリエイトの上西一美です。
先日、兵庫県の市道で車6台が絡む事故がありました。
一方通行の市道を逆走する乗用車が、パトカーの制止を聞かず5台の車を巻き込みながら800メートルも逃走し、電柱に衝突してようやく止まりました。
逃走した車の運転者からは、基準値の約4倍を超えるアルコールが検出されました。車内からはビール缶も見つかったそうです。
数か月前にも、飲酒運転の白ナンバートラックが下校中の小学生の列に突っ込むという死傷事故がありました。
14年前に、飲酒運転に関する道路交通法が改正されて厳罰化もされましたが、残念ながらいまだ飲酒運転はなくなりません。
残酒に注意!
この記事を読んでくださっている皆さんは、飲酒運転は絶対にしないと思いますが、一つ気を付けていただきたい事があります。
それは「残酒」です。
前の日に飲んだお酒が、次の日にも体内に残っている状態のことです。
残酒で検挙されるのは、多くの場合事故を起こした時です。
警察官が事故現場に駆けつけて、運転者からお酒の匂いがするということで検査して発覚します。
運転者がどんなに「昨夜飲んだお酒だ。運転前や運転中には飲んでいない」と主張しても、体内にアルコールが残っている状態ですので、事故は飲酒での事故という扱いになります。
事業用自動車の飲酒運転の事故では、会社が7日間の事業停止になることもあります。そうなってしまうと、会社に誰も入れなくなります。車を全台止めなければならないわけです。
会社に非常に大きな迷惑をかけてしまうということになります。
1単位、4時間
次の日に運転しなければならないのであれば、飲む量を考えて飲んでいただきたいと思います。
飲むなとは言いません。
しかし、次の日の何時から車に乗らないといけないのかをしっかりと考えて、飲む量を調整していただきたいのです。
車を運転される方は、「アルコール1単位」の考え方をぜひ覚えてください。
1単位のアルコールが分解されて体から抜けるには、4時間かかるとされています。これがひとつの目安となります。
ビールなら500ml、日本酒は1合、焼酎は110mlといった具合に、1単位はお酒の種類によって目安量が決められています。
もちろん体格や体重などによって分解速度が変わるので、厳密には個人差がありますが、飲酒量の目安として覚えておいてください。
寝ても抜けないアルコール
一晩寝たらアルコールが抜けると思っている方もいますが、これは間違いです。
アルコールの分解速度は睡眠中の方が遅くなります。
寝ている間は全身の血流がゆっくりになり肝臓に入る血液量が低下するため、アルコールの分解が覚醒時よりも遅くなってしまうのです。
「寝たから大丈夫」ではないのです。
翌日の運転が飲酒の何時間後なのかを計算し、それまでに確実にアルコールが分解する量だけを飲むようにしてください。
私はこれまで、飲酒運転による事故で亡くなった方のご遺族に何度もお会いしてきました。
未来あるお子さんを、飲酒運転による事故で亡くされた方もいました。
みなさんが乗っている車は、簡単に人を死なせてしまう物なのです。
「このくらいなら大丈夫だろう」という気持ちが、誰かの未来を奪う結果を招くかもしれません。
誰かを死なせてからでは遅いのです。
飲酒運転に限らず、あなたが加害者となって凄惨な事故の被害者を生まないよう、車を運転する際には運転に集中していただきたいと思います。
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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。