【交通安全ニュース解説コラム】第13回 ペットを乗せて運転する際に気をつけること
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
先月、神奈川県でとても悲しい交通事故が起きました。
飼っているインコを動物病院へ連れて行こうと車を運転していた女性が、自転車2台をはね、39歳の女性と3歳の男の子が亡くなりました。
運転していた女性は、自動車運転死傷処罰法違反容疑で現行犯逮捕されました。
事故の原因は助手席に乗せていたインコに気を取られ、よそ見をしていたことでした。
ペットの乗せ方次第では道路交通法違反に
みなさんも飼っているペットを車に乗せることがあると思います。
私もよく車両の窓から顔を出している犬を見かけるのですが、実は、この状態でペットを車に乗せるのは道路交通法違反になる可能性があるのです。
道路交通法第五十五条の第二項に「車両の運転者は、運転者の視野若しくはハンドルその他の装置の操作を妨げ、後写鏡の効用を失わせ、車両の安定を害し、又は外部からの当該車両の方向指示器、車両の番号標、制動灯、尾灯若しくは後部反射器を確認することができないこととなるような乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない。」と定められています。
窓から顔を出しているペットが、もし運転者の視野を妨げているようであれば、明らかな違反行為となります。
ペットを飼われている方は気分を害するかもしれませんが、ペットは「乗員」ではありません。
「貨物」扱いになります。
荷物として扱えと言っているのではありません。
しかし、乗員ではない以上、道路交通法違反にならないためにも、そして何より安全のためにも、乗せ方に注意が必要なのです。
膝に乗せて運転するのは悲惨な事故を招く
また、第七十条では「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と記載されています。
例えば、膝の上にペットを乗せて運転している人を時々見かけますが、その状態で確実にブレーキを踏めるのか、安全にハンドル操作が出来るのかを考えて頂きたいのです。
私は、ペットを膝にのせて運転する状態では、確実な運転行動が出来るとは言い切れないと思っています。
これはペットに限らず、小さな子供を抱えて運転するのも同じです。
これらの行為は道路交通法違反にあたる可能性が非常に高いですし、何より、冒頭にお話しした事故と同様、悲惨な事故を起こして死亡者を出すことに繋がります。
安全に配慮するのは運転者の義務
ペットはケージに入れて車に乗せるのが、安全だと思います。
狭いケージに入れるのはかわいそうかもしれませんが、だからといって運転の妨げになり得る状態で乗せていると、人を殺めてしまう事故を起こすかもしれないのです。
先月の事故ではペットがインコだということですから、鳥かごには入れていたと思います。
しかし、気を取られる状態で乗せていた事が事故の原因になっており、その状況が安易に想像できたのではないかということから、重大な過失として取られる可能性が高いでしょう。
運転中に助手席やダッシュボードから荷物が落ちただけで、人はとっさに取りに行く動きをしてしまい、事故を起こしてしまいます。
そういう事故を、映像分析でこれまでに沢山見てきました。
ましてやペットは生き物です。運転者の意に反して動くこともあります。
そうなった時に、絶対に事故を起こさない保証はないのです。
周囲の人を危険に巻き込まないためにも、そしてペットを守るためにも、ケージに入れて車に乗せるようにしてください。
運転者が気を取られることのないよう、ケージは運転席の後ろあるいは荷台に乗せて、安全性に最大限の配慮をしてください。
それが、車を運転する者の、最低限の義務なのです。
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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。