【交通安全ニュース解説コラム】第79回 道路交通法改正から1年:電動キックボードの危険行動と安全教育の必要性
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
先日、ヤフーニュースに、電動キックボードの交通違反検挙数が高止まりであるという記事が出ていました。
2023年7月に道路交通法が改正され、条件を満たした電動キックボードについては、「特定小型原動機付自転車」とされ、運転免許証がなくても乗れるようになりました。
しかしながら、改正から1年以上が経った今でも、使用条件や法律を正しく理解している人が少ないように感じます。
交通事故防止コンサルタントとして、ドライブレコーダーの事故映像を分析しているのですが、この1年間で電動キックボードの事故映像を何度も見てきました。
多くの場合は、車両側の過失ではなく、電動キックボード側の過失でした。
いわゆる道路交通法違反による過失です。
気軽にレンタルできるということを、誰でも手軽に、そして気楽に乗って良い物だと曲がった解釈をしているのではないかと感じてしまいます。
1年間で25,000件以上
今年9月には、警察庁が「特定小型原動機付自転車施行後1年間の状況」について発表しました。
それによると、交通違反の検挙数が25,156件、交通事故発生件数が219件(死者0人、負傷者226人)でした。
検挙件数が25,000件を超えていますが、たまたま検挙されなかった違反を含めるとさらに多くの違反者がいると思われます。
検挙された違反において、最も多かったのは通行区分違反です。
全体の55%、13,842件でした。
通行区分違反というのは、走行してはならない場所を走行したという違反です。
電動キックボードは、基本的に車道を走行しなければなりません。
電動キックボードは、時速20kmを超えて加速できない構造になっていますが、たとえ20kmでも歩行者からすればかなりのスピードです。
歩道を走行して歩行者と衝突すれば、軽い怪我ではすみません。
打ち所が悪ければ、死亡事故になる場合も十分にあり得るのです。
1番目に多かった違反は、信号無視です。
全体の31%、7,725件でした。
信号無視をして横断した結果、車両と衝突すれば、重大事故になる可能性もあります。
警察庁のアンケート調査では、電動キックボードの運転中、ヘルメットを着用していると回答した人は2割しかいませんでした。
信号無視をして車両と衝突をすれば、その勢いで投げ出されて路面に頭を打ち付けてしまいます。ヘルメットを着用していなければ、頭部強打で外傷を負うでしょう。
自己防衛で事故防止を
今後の交通安全対策として、関係事業者からいくつも案が出ているようですが、最も大切なのは電動キックボードの利用者に、交通ルールを理解し守ってもらうことです。
その教育をこれからどのように行っていくのか、それが要ではないでしょうか。
車両を運転する方も、電動キックボードに乗る人を見たら、自己防衛のために車間距離を十分に取るようにしてください。
また、追い越しをする際も、減速をしたうえで車間距離を取りつつ追い越すようにしてください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。