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【交通安全ニュース解説コラム】第75回 事故が増える季節 夕方の『魔の時間』に備えよう

みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
10月になって、朝晩の気温が少し下がって過ごしやすくなってきたように思います。
これからは徐々に日没の時間が早まってきます。
そしてその日没の時間帯に、事故が増えてくるのがこの季節の特徴でもあります。

下図は警察庁が発表した、令和元年から令和5年の5年間における時間帯別・月別の死亡事故件数の統計ですが、日の入り時刻と重なる17時から19時、そして10月から12月にかけて多く発生していることが見て取れます。

私が交通安全サポーターを務めている愛知県警察では、「夕方の”5~7″は魔の時間」というポスターを作成して啓発活動を行っています。
愛知県警察のホームページからダウンロードもできるので、ご活用ください。

薄暮時間帯は視力が低下する

日没の前後1時間(通算2時間)を「薄暮時間帯」というのですが、10月から12月にかけては、この時間における事故が増加します。
なかでも自動車と歩行者の死亡事故は、昼間と比較して3.3倍にもなります。
これは、周囲が見にくくなる日没時間と、人々の帰宅などの移動が同じタイミングになることが影響していると考えられます。

周囲が薄暗くなると、視力も低下します。
一説では、1.0の視力がある人でも、夜間になると0.6程度にまで低下してしまうといわれており、この現象は「夜間視力」と呼ばれています。
年齢を問わず、辺りが薄暗くなることでコントラストがなくなり、物が見にくくなる状態になります。
加齢や白内障などの病気が原因となって、夜間の視力がさらに低下することも考えられます。
いずれにしても、薄暮時間帯で視力が低下し、歩行者の発見が遅れて接触をしてしまうのです。
前照灯を早めに点けてコントラストを強め、歩行者を見やすい状態にしてください。

横断中の事故が8割

薄暮時間帯の自動車と歩行者の衝突事故の8割は、横断中に起こっています。
そしてその横断場所は、横断歩道以外が7割、さらにその歩行者の7割に法令違反があったことが統計から明らかになりました。

最も多い歩行者の法令違反は「走行車両の直前直後横断」となっています。
これは、停止している車両の前後の横断や、車列の間を縫うようにして横断することを指します。
夜間視力で見えにくいうえに、死角となっている場所から横断者が出てくるため、運転者からすると「突然目の前に出てきた」という状態になりかねません。

薄暮時間帯に運転をする場合は、たとえ横断歩道のない場所でも、生活道路や歩行者が多い場所では、横断歩行者がいるかもしれないという意識で運転をしてください。
特に反対車線の車両が停止している場合などは、そのすき間から歩行者が出てくることも想定して、徐行しながら走行してください。
暗くなって「見えない」と自覚してから前照灯を点けるのではなく、日が傾いてあたりが薄暗くなってきたら、前照灯を点けるようにしてください。
夕方5時になったら前照灯を点ける、と決めている企業もあります。
「まだ見える」から点けないのではなく、「日が暮れ始めたら」点けるようにしてください。
それだけで、防げる事故があるのです。

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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター

1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。