【交通安全ニュース解説コラム】第8回 巻き込み事故
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
11月に、子供たちがまた事故の被害者となりました。高校生と、母親が抱っこしていた生後8カ月の乳児です。
どちらの事故も、トラックの左折時の巻き込みが原因でした。
残念ながら生後8か月の子は亡くなられたそうです。
大型車の事故だと、左折時の巻き込みで被害者の方が亡くなられるというケースは非常に多いです。
ここ最近、左折時の巻き込み事故に関するニュースが多いように感じます。
そこで今回は、左折時の事故防止について、お話したいと思います。
一時停止が鉄則
まず鉄則として、左折時には止まって安全確認をしてください。
動きながらの確認では、確実に危険を回避するのは難しいと思います。
運転行動というのは、認知・判断・動作の繰り返しで成り立っているのですが、左折しながら歩行者や自転車がいないかを確認するというのは、そのすべてを同時に行っていることになります。
認知に集中しなければならない状況で、他のことに気を取られてしまう状態を自ら作り出しているのです。
法律では徐行が定められているので、最低限10km/h程度まで速度を落とさなければなりませんが、事故を防ぐためには止まって確認する運転習慣を身に付けていただきたいと思います。
次に行っていただきたいのは、体を動かして確認するということです。
左折時に車を止めて確認したとしても、一方向からパッと見て何も見えていないから「何もない」と判断するのは十分な安全確認とは言えません。
ピラーやミラーの死角になって、運転席からは見えていないだけで実際には歩行者や自転車がいる場合があるのです。
運転席にいる自分からは見えていないが、「人がいる」あるいは「物がある」と思ってください。
死角にいる人や物を確認するには、やはり体を前後や左右に振ってピラーやミラーの向こう側を見なければなりません。
見える状態を作るのが義務
大型車に乗っている方は特に、見える状態をしっかりと作るようにしてください。
道路交通法第55条には、視界の確保について記載がありますので、一度確認してみてください。
大型車には助手席の足元に安全窓が付いています。この窓を塞いでしまう位置に長靴やコーンなどの物を置いている車両を見かけることがありますが、道路交通法違反にあたります。時にはシールで窓を塞いでしまっている車も見かけますが、これはもう論外です。絶対にやめてください。
乗用車でも時々見かけますが、助手席や運転席にカーテンを付ける行為は違法行為にあたります。これもやめてください。
自分の視野を最大限見える状態で確保するのは、運転者の義務です。
交通事故を起こして被害者を出さないために、必ず実行してください。
安全のために面倒なこともきちんと行う
ダッシュボードにぬいぐるみを置いたり、トラックであれば許可証を内側から窓に張り付けたりしている車もありますが、これも視界を妨げることになるのでやめてください。
ヘルメットやバインダーを置いたりするのも危険です。これは視界を塞ぐだけでなく、ブレーキをかけた拍子などに落ちてきた場合、運転操作を誤る原因にもなりますので、非常に危険です。
許可証や必要書類を挟んだバインダーなどは、現場に入る時に置くようにしていただきたいと思います。
面倒だなと思われるかもしれませんが、安全運転というのは、面倒なことをしなければならないのです。
「面倒くさいな」や「まあいいか」と思った時に、事故は起こります。
冒頭の事故でも運転者の方は「確認不足だった」と証言しています。
正直に言うと、確認を一つ一つ確実にするのは面倒ですよね。しかし、それをきちんと行うことで、不幸な事故はなくせるのです。
面倒くさいからという理由を優先して、誰かの命を奪ってしまうことがないように、しっかりと確認をする運転行動を身に付けてください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。