【交通安全ニュース解説コラム】第66回 交差点での車両相互事故を防ぐには
みなさんこんにちは、ディ・クリエイトの上西です。
滋賀県大津市で保育園児たち16人が死傷した事故を、覚えている方はどれくらいいるでしょうか。
あの事故から、先日で丸5年になりました。
月日が経つのは本当に早いものですね。
でも、きっと、亡くなった子供たちの親は、心のどこかで時間が止まったままなのではないかと思います。
事故は、大津市の琵琶湖沿いの交差点で起こりました。
右折しようとした車と、直進していた車が衝突し、そのはずみで直進車が歩道に乗り上げ、散歩中だった子供たちをはねました。
園児2人が亡くなり、保育士3人を含む14人が重軽傷を負いました。
右折車の運転者は、過失運転致死傷などの罪で起訴され、2020年2月に禁錮4年6か月の判決が下されています。
現場の交差点には事故対策としてガードレールが設置されたそうです。
右直事故は年間2万6千件以上
このような、右折車と直進車が衝突をする事故は右直事故(うちょくじこ)と言われるもので、非常に多く起こっています。
令和5年の事故統計では、車両相互の右折時事故は26,188件も起こっています。
このすべてが右折車と直進車との事故とは限らないのですが、片方の車両が右折しようとしていた際に起きた事故であることは間違いありません。
右直事故にはいくつもの原因があります。
対向車線の右折レーンにいる車によって死角が発生し、直進してくる車両に気づかないまま右折してしまい衝突するケース。
俗に「サンキュー事故」と言われる、直進車が譲ってくれたので右折しようとして、その陰から出てきた二輪車と衝突してしまうケース。
そして、無理に右折しようとして、直進車と衝突してしまうケースなどです。
直進車の速度を見誤って、まだ大丈夫だと思って右折をしたら、危険な状態になってしまうこともあると思います。
時折、信号が変わった直後に、右折していく車を見ることもあります。
このような行為は法律違反であることはもちろん、非常に危険なので、絶対にしないでください。
命を守る運転を
そもそも、直進車が見えているにも関わらず右折を行う行為は、道路交通法違反なのです。
「だろう運転」ではなく「かもしれない運転」をするようにいつもお伝えしていますが、法律で定められていることもあり、直進車の運転者が「まさか強引な右折はしないだろう」と思うのも当然のことだと言えます。
そのため、直進車の多くは、減速をせずに交差点に進入します。
一方で、強引な右折をしようとする車両の運転者は、隙をついて右折をしようとしていることもあり、アクセルを踏み込んだ状態で交差点に進入するのではないかと思います。
どちらも速度が出たまま衝突をすると、その衝撃で車はあらぬ方向へと突進し制御ができなくなります。
大津市での事故のように、歩道に乗り上げ、第三者を巻き込むような重大事故となるのです。
子供に先立たれる親の悲しみは計り知れません。
事故の後遺症に苦しむ子供たちもいると思います。
子供たちの命と人生を守るためにも、安全に徹した運転をしてください。
危険を顧みず、人の命を犠牲にしなければならないほど急がなければならないことがあるのでしょうか。
時間に余裕のない運転をしてしまう人は、早めに家や会社を出るようにしてください。
交差点への進入時は、直進であれ右左折であれ、速度を落としてください。
道路上に子供たちの姿を認めたら、構えブレーキで走行してください。
交通事故は、一瞬で人生を変えてしまいます。
後悔しても遅いのです。
あなたとあなたの大切な家族が、交通事故の加害者にも被害者にもならないために、私たちはこれからも事故のない社会の創造を目指して活動していきます。
どうか一緒に、安全な世の中を創ってください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディ・クリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。