【交通安全ニュース解説コラム】第10回 安全運転って何?
明けましておめでとうございます。ディ・クリエイトの上西です。
年末年始の慌ただしい時期もようやく抜けようとしていますが、皆さんは無事故で過ごせましたでしょうか。
今年最初のコラムは「安全運転って何?」というテーマでお話をしたいと思います。
これまでももちろん、安全運転をするためにはどのような運転行動をしたらよいか、事故を起こさない・巻き込まれないためには何に注意して運転をしたら良いかなど、その都度ポイントを絞ってお話してきました。
今回は、「皆さんが思う安全運転とは何か」についてです。
そもそも安全運転ってどういうこと?
「安全運転とは何ですか」と聞かれたら、皆さんは何と答えますか?
セミナーでもよくお聞きするのですが、例えば「速度を守ります」や「道路交通法を守ります」、「細心の注意を払います」といった答えが返ってきます。人それぞれに安全運転についての考えがあって、私も勉強になることが多くあります。
中でも非常に印象に残っているのは、5年ほど前に福岡県の運送会社様で研修を行った時の事です。
いつものように私は受講者たちに「安全運転とは何ですか」と問いかけました。
すると20代の男性社員が「分かりません」と答えたのです。
私は最初、ふざけているのかと思いました。
「分かりませんってどういうこと?」と重ねて問いかけたら、彼は「本当に分からないのです」と再度答えました。
そして彼は続けてこう話したのです。
「僕は速度も守るし、一時停止もしっかり止まります。再確認もします。完璧な運転をしていると思います」
それを聞いた時に私は「じゃあ安全運転しているじゃないですか」と言ったのですが、彼は「でも、僕がいくら完璧な運転をしたと思い込んでいたとしても、周りの車が『あのトラック危ないな』とか歩行者が『あのトラック怖いな』と思ったらそれはもう安全運転じゃないですよね」と答えたのです。
私はそれを聞いてハッとしました。
「安全運転とは自分が決める事ではなく、周りが決めることだ」と彼は言ったのです。
安全運転している「つもり」
例えば、歩行者の横を車で通過する場合は、徐行するように道路交通法で定められています。ただし、歩行者との距離が1メートル以上ある場合は徐行しなくても良い事になっています。
私は1メートル以上の距離があったとしても必ず徐行をしています。もちろん、安全のためにです。
徐行運転をしている方としては安全運転をしているという気になります。
しかし、先ほどの彼にとってみれば、すれ違う歩行者側が「この車危険だな」と思ったら、いくら徐行をしていたとしてもそれは安全運転ではないということなのです。
私たちは常に安全運転をしている「つもり」であって、周りの人や車が、自分の運転をどう評価するかがポイントになるのです。
安全だと思われるような運転を意識する
私は主にプロドライバー向けにセミナーを行う事が多く、よくプロドライバー達には「道路交通法を守った運転をするというのは当たり前の事、最低限やる事だ」と伝えています。
自分が運転をする事によって周りの人に安心感を与える、あるいは、周りの人から見ても「この車は安全だな」と思われる運転をするのがプロドライバーの運転です。
安全運転とは、運転する私たち自身が決める事ではなくて、交通に関わる周りの人が決める事なのです。
車の運転とは「感覚」ですから、自分が安全運転をしている「つもり」でも、他の車からしたら不安全な行動を取っているというのはよくある事です。
皆さんも他の人が運転する車の助手席に乗った時に「この人、車間距離をずいぶん詰める人だな」とか「ブレーキを踏むタイミングが遅いな」と思う事がないですか?
でもこれは運転している人にしてみたら「普通」の事であって、安全運転をしている「つもり」なんですよね。
やはり、周りの車から見て自分の運転が安全だと思ってもらえるように意識をすることが、安全運転なのだろうと思います。
皆さんも、「周りの車から自分の運転がどう見えるのか」をしっかり意識して運転してください。
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執筆:上西 一美
株式会社ディクリエイト代表
一般社団法人日本事故防止推進機構(JAPPA)理事長
Yahooニュース公式コメンテーター
1969年生まれ。関西学院大学法学部卒業。大手企業を経て神戸のタクシー会社に25歳で入社。27歳からその子会社の社長に就任。その経験を元に、2004年ディ・クリエイトを設立し、交通事故防止コンサルティングを開始。ドライブレコーダーの映像を使った事故防止メソッドを日本で初めて確立し、現在、年間400回以上のセミナー活動をこなす。2万件以上の交通事故映像を駆使し、その独特の防止策で、依頼企業の交通事故削減を実現している。2019年よりYouTube番組『上西一美のドラレコ交通事故防止』を毎日更新中。