メーカーの名前を背負う
責任感を持った言動の心がけ

- 御社の事業内容を教えてください。

井の下社長)飲料など自動販売機のフルサービスオペレーションをメインに、センター配送、ルート配送のほか、運送業に特化した人材派遣業も行っています。また、3年ほど前から大型と中型トラックの所有台数を増やし、業界や領域を問わない一般的な貨物輸送の事業も拡大しています。自販機オペレーションは力仕事も多く、高齢になるにつれてドライバーの離職率は上がる傾向にあるため、彼らのような経験を積んだドライバーを活かさないのはもったいないと考え、長く活躍してもらうための事業展開です。

- 経営理念として「常にお客様目線に立ち、相互扶助の精神を忘れず、健全で良質な物流サービスを提供し続ける」と掲げていらっしゃいますが、従業員の方は日頃の業務でどのようなことを心がけているのでしょうか?

井の下社長)“お客様目線”とはすなわち、クライアントの立場に立った言動を心がけるということです。たとえば、自販機が施設内のロケーションでしたら施設の担当者にきちんとご挨拶をしますし、集配では店舗などの担当者の方が立ち会って検品をすることもあるため、その際もお客様目線で対応するということを大切にしています。弊社の従業員はクライアントであるメーカー、それも誰でも知っているような大手飲料メーカーの名前が入ったトラックに乗り、そのメーカーのユニフォームを着て作業をするので、一般の方から見たら協力会社の人間だという見分けはつきません。自販機の設置先の方々は日東フルラインではなくそのメーカーの従業員だと思って接しますので、イメージを壊してはいけないというプレッシャーは常にありますね。そのため、業務中の挨拶や就業姿勢については日頃からしっかりと指導しています。

ドライバーの運転のクセを把握
AIドラレコならではの強み

- 安全運転に対する御社のこれまでの取り組みや、課題と感じていることを教えてください。

井の下社長)ナウトを導入する以前は、どの運送会社でも行っているような新人研修や事故対策指導、外部研修や同乗教育などはしっかりやっていました。ナウトを導入してからは危険挙動がさらに具体的にわかるようになったので、検知して録画された映像をもとに各拠点に情報を共有、安全対策会議をするよう促しています。

- ナウトを安全運転指導に活用していただきありがとうございます。導入の決め手となったのはどんな点でしょうか?

井の下社長)管理側が一番気にしている「ドライバーが普段どんな運転をしているのか」ということがわかる点です。他メーカーのドライブレコーダーでも、急ブレーキを踏めば危険挙動として検知されますが、ナウトは何気なく運転しているときでも前の車に接近している時間が一定時間続けばアラートが出ますよね。それが検知できれば煽り運転の防止になりますし、他にもわき見運転、携帯電話での通話、シートベルト未装着など、急ブレーキを踏んだときのようにわかりやすい危険挙動以外でどんな運転をしているのかがわかるので、大変重宝しています。

- そこはまさにAIドライブレコーダーならではの特徴です。視線の向きでわき見運転などを検知するドラレコもありますが、ナウトはさらに顔の傾きや体の動きなどを含めてAIが総合的に判断しています。危険運転を正確に判定し、誤検知を減らすための技術です。

井の下社長)たとえば、運転中にスマホを操作していても急ブレーキを踏んで初めて検知されるようなレコーダーの場合、ドライバーに「たまたま、このときだけです」と言われてしまうと、私たち管理者側はそれを信じるしかありません。ナウトは運転中にスマホを一定時間持っていると、その動作も危険挙動として検知できますよね。それが何回も続くなら、そのドライバーは普段からスマホを操作して運転をしているということ。数値には出ない普段の運転のクセがわかるというのは大きいと思います。

罰則ではなく競争体制を作り
安全運転への意識を醸成

- 安全運転を遵守するために、会社としてどのような体制を取っていらっしゃいますか?

井の下社長)弊社はISO39001(道路交通安全マネジメントシステム)の認証を2014年11月に取得していますので、それを土台とする「安全管理課」という専門部署を社内に設けています。安全管理課が発信元となり、各営業所の所長を集めて安全対策会議を毎月実施。ISOの認証を維持するためには継続的な取り組みが必要ですので、安全運転への意識は常に高く持っています。実は会社を設立した1995年当時、弊社では年間100件ほどの事故が起きていたんです。その都度管理者を厳しく指導したり、事故を起こしたドライバーに減給のペナルティーを与えたり、今では考えられないような厳しい措置を取ることで事故件数は3,4割程度まで減らせたのですが、それ以上減らすことがなかなかできずにいました。

- 他の企業様も「罰則をつけることである程度事故件数は減らせるが、人の意識そのものを変えることは難しい」と話しているのを聞いたことがあります。御社ではそこからどのような工夫をして改善されたのでしょうか?

井の下社長)以前はどうしても事故が発生した後での運転指導になっていたのですが、ドラレコやデジタコを導入してから事故予防の教育を本格化していきました。危険運転を数値化できるようになったので、現在はその回数や項目の数で営業所ごとに順位付けをする「安全キャンペーン」を定期的に実施しています。危険挙動が発生すると減点するという形で、事故検知が少ない拠点やドライバーには商品券を贈呈しています。一人が危険挙動を起こすと営業所全体の評価が下がり、ドライバーが「ルールを破っているのは自分だけだ」と気づくことで安全運転への意識は変わるはず。罰則を与えて力ずくで抑えるのではなく、会社全体の風土を醸成する方へとシフトしていきました。そのように変わっていったのは、やはりドラレコやデジタコのおかげですね。

- 実際にナウトを導入したことで効果が感じられているということでしょうか?

井の下社長)ナウトを導入してすぐに、前年比60%まで事故を減らすことができました。一つの拠点にドライバーが30人ぐらいいると、所長がすべての運行データをチェックする時間はなかなか取れませんが、ナウトは検知したデータがリアルタイムで反映されるので、チェックや指導がしやすくなったと聞いています。(ISO取得のため)以前は標準的な市販のドラレ コを導入していた時期もありましたが、それらと比較しても圧倒的にナウトの使い勝手の良さを感じています。今まで再発防止は強化していましたが、未然防止のためには先ほども話したようにドライバーの普段の運転姿勢を把握しなければいけません。そのために必要な危険挙動の検知という点で、やはりナウトが非常に優れていると感じています。

- ありがとうございます。一方、車内カメラが設置されることに関してはドライバーさんとのコミュニケーションが必要だったのではないでしょうか。

井の下社長)やはり「監視されている」という印象が強いようで、最初は反発の声も社内で上がりました。決してそういう意味ではなく、「実際に事故があったときに自分自身を守ることにつながる」ということや、「他のメンバーに同じような事故を起こさせないためにも必要」ということを繰り返し伝えていくことで、反発の声は徐々になくなっていきました。今では皆納得した上で乗車しています。

公道で運転するプロとして
安全運転への取り組み強化を

- AIドライブレコーダーの導入を検討している同業他社や物流業界全体に対し、御社としてはどのような点を勧めたいですか?

井の下社長)事故や急制動などの危険挙動を数値化することはどのメーカーのドラレコでもできると思いますが、運転をするドライバーの姿勢は数値からは見えてきません。携帯電話の使用、喫煙、わき見運転は我々としても一番気になるところなので、普段の運転姿勢を把握することができるという点はぜひ勧めたいです。頭ごなしに指導するよりも映像を見せた方が伝えやすいですし、以前より明確に問題点がわかることで指導の精度も上がりました。社員ともよりコミュニケーションが取れるようになったと感じています。

- 御社のように安全指導の専門部署を立ち上げるのは物流業界においても革新的なことだと思います。コロナ禍で運送業の負荷も上がり、縁の下の力持ちとして業界のイメージを変えようと取り組んでいる企業が多いと私たちも感じているのですが、井の下社長の今後の物流業界への思いをお聞かせください。

井の下社長)先日、JAF(日本自動車連盟)が発表した「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査 2020年版」のなかで、車両の一時停止率が都道府県別に一覧になっていたのですが、私たちの拠点である大阪は11.8%でワースト5。一方、1位の長野県は72.4%と圧倒的な数値でした。なぜ長野県では一時停止率が高いのかというと、県内の小学生たちに「横断歩道を渡るときに手を挙げて、渡り終わってから一礼する」という習慣が根付いていて、その子たちが大人になって車を運転する立場になったときに一時停止が自然と身につくようになるというんですね。歩行者に向けた取り組みが県全体で行われていることを知り、私たち運転する側ももっと積極的に安全運転への意識を高めていかなければいけないと感じました。

- 歩行者がいかに気をつけていても、運転者の意識が変わらなければ事故は減らせないですからね。

井の下社長)はい、世間では飲酒運転や煽り運転などドライバーのイメージが悪くなるような事故も多数起きており、他の運送会社の皆さんも抱えている課題意識は同じだと思います。私たちは公道を使わせてもらっているプロのドライバーだということをもっと自覚して、できることから取り組んでいかなければいけないと考えています。